平の駅前と小名浜の港、初顔合わせはどちらで
初めて会う日の起点として扱いやすいのは、いわき駅です。常磐線で南北から来る人も、磐越東線で西の山あいから来る人も、この駅で降りれば迷いません。1994年までは平駅と呼ばれていた駅で、周辺はいわき市の中心地区にあたります。駅の周りには駅ビルや複合ビル、映画館がまとまっているので、急に雨が降っても屋内に移って話を続けられます。駅のすぐ北側は磐城平城の跡が残る高台で、にぎやかな駅前から少し離れて歩きたいときの行き先になります。同じ平地区には、国の重要文化財の社殿を7棟持つ飯野八幡宮もあります。
海を見ながら会いたいなら、小名浜港のアクアマリンパークが候補に入ります。いわき小名浜みなとオアシスとも呼ばれる港の一角です。港の第2号埠頭には県の水族館であるアクアマリンふくしま(正式名称はふくしま海洋科学館)が建ち、同じパーク内のいわき・ら・ら・ミュウは海産物の店や飲食のフロアが入った市の観光物産館です。その西側入口のあたりは、小名浜の遊覧船の発着場所になっています。1997年にオープンしたら・ら・ミュウは、2025年に道の駅としても開駅しました。港の背後には2018年に大型の商業施設が街開きし、そこには映画館も入っています。水槽の前では会話の糸口が見つかりやすいので、初対面の緊張がほぐれるまでの時間を水族館に任せる組み立ても成り立ちます。
小名浜の三崎公園には、1986年に竣工した展望塔のいわきマリンタワーがあります。塔そのものの高さは59.99mですが、岬の上に建っているため展望室は海抜106mの位置にあり、屋上のスカイデッキからは太平洋といわきの市街を360度見渡せます。地図で見るだけでは分かりにくい市の広がりを二人で確かめられる場所で、相手の住む地区を上から指さしながら話すのも楽しいものです。
| 地区 | 目印 | どんな日に向くか |
|---|---|---|
| 平薄磯・豊間 | 塩屋埼灯台、薄磯海岸と豊間海岸 | 天気の良い日に海沿いを歩きたいとき |
| 常磐 | いわき湯本温泉の温泉街 | 二人とも車がなく、常磐線で集まる日 |
| 平 | 松ヶ岡公園、いわき市フラワーセンター | 駅前より静かな場所で話したいとき |
| 勿来 | 勿来関跡(勿来の関公園) | 市の南部に住む相手と会う日 |
表の一つ目に挙げた塩屋埼灯台は、1899年に初めて灯がともった白い灯台です。「日本の灯台50選」にも選ばれていて、地元では「豊間の灯台」とも呼ばれています。周辺は磐城海岸県立自然公園に指定され、灯台の北に薄磯海岸、南に豊間海岸が延びています。近くには美空ひばりの「みだれ髪」の歌碑と遺影碑も建っています。
常磐地区で話の種になるのが、スパリゾートハワイアンズです。炭鉱会社だった常磐炭礦が1966年に開業させた施設です。旧称を常磐ハワイアンセンターといい、2006年には映画「フラガール」の題材にもなりました。市もハワイの雰囲気を打ち出した観光のイメージづくりを続けていて、温泉街と南国風の演出が同じ地区に並んでいます。
十四の市町村が一つになった街の、地区ごとの暮らし
いわき市は福島県浜通りの南部にある中核市で、浜通り地域の行政、経済、文化の中心を担っています。いまの市は、1966年に平市、磐城市、勿来市、常磐市、内郷市の5市と周辺の町村、合わせて14の自治体が合併して生まれました。そのため現在も、平、小名浜、勿来、常磐、内郷、四倉といった旧市町村の名前が地区名として日常的に使われています。
面積は福島県のなかでも広く、東は約60kmの海岸線で太平洋に面し、西は阿武隈高地の山あいへと続きます。常磐道より西側は山間部で、市街地どうしも丘陵で隔てられ、一続きの街並みにはなっていません。分かれた市街地を南北につないでいるのが常磐自動車道と国道6号です。中心の平は、磐城平城のあった高台と、夏井川、好間川、新川に囲まれた城下町を範囲とする地区です。平のなかでも、鉄道の北側には住宅地が広がり、南側に市街地が形づくられています。相手が「いわきに住んでいる」と言っても、それだけでは平の住宅地なのか、海沿いの小名浜なのか、山側の三和や川前なのかは分かりません。地区名を一つ聞くだけで、会う場所の見当がずいぶんつきやすくなります。
港と工場と観光地、いわきは一つの言葉では言い表せない街です。小名浜港を抱える港湾都市であり、製造品出荷額が県内のおよそ2割を占める工業都市でもあります。医療創生大学、東日本国際大学、いわき短期大学、福島工業高等専門学校と、高等教育機関も市内に四つ置かれています。かつては常磐炭田の炭鉱の街でしたが、そこから観光の街へと姿を変えてきました。通勤の範囲で見ると、いわき市は境を接する広野町と一つの都市雇用圏をつくっています。いわきでの社会人の出会いでは、相手の職場が港や工業地帯の側にあるのか、平の駅前にあるのかによって、平日の夜に無理なく落ち合える場所が変わってきます。
南の茨城県とのつながりも、この街らしさの一つです。歴史的に陸前浜街道を通じて茨城県側との行き来が深く、方言や習慣は同じ福島県内の中通りより茨城県に近いと言われます。中通りの出身者と付き合う場合は、言葉の違いがそのまま話題になることもあるでしょう。
気候は東北のなかでは一年を通して比較的温暖とされ、小名浜の平年値では年平均気温が13.8℃で、真夏日が少なく、真冬日はほとんどありません。日照時間も年間で2,000時間を超えます。冬でも海沿いを歩く約束を立てやすいのは、この土地ならではの利点です。
いわき駅で北と南に分かれる常磐線
市内の常磐線には、南から勿来、植田、泉、湯本、内郷、いわき、草野、四ツ倉、久ノ浜、末続の10駅が並びます。普通列車の大半はいわき駅で系統が分かれ、南側は水戸や土浦方面、北側は原ノ町方面へ向かいます。四ツ倉や久ノ浜に住む人と植田や勿来に住む人が会うなら、どちらもいわき駅までは一本で来られるので、駅前を合流点にすると乗り継ぎの手間がありません。東京方面とも結ばれていて、いわき駅から東京駅までは特急で2時間余りです。いわきより北へも1日3本の特急が乗り入れ、仙台方面と直通しています。
阿武隈の山あいと水郡線の町、周辺との行き来
磐越東線と国道49号で西の山あいへ
「ゆうゆうあぶくまライン」の愛称を持つ磐越東線は、いわき駅から郡山駅までの85.6kmを結ぶ全線非電化の単線で、走るのはすべて普通列車です。いわき市内では赤井、小川郷、江田、川前の各駅を通り、その先で阿武隈の山あいの町に入っていきます。
この沿線でいわき市と境を接しているのが小野町です。町内には夏井駅と小野新町駅があり、いわき駅から小野新町駅までは約40kmあります。諏訪神社の翁杉・媼杉は国の天然記念物に指定されていて、町を案内してもらうときの目印になります。ただ、列車の本数は区間によって上下各6本から8本ほどと少なめです。途中の小さな駅で落ち合おうとすると待ち時間ばかり長くなりがちなので、小野町での出会いなら、いわき駅か小野新町駅のどちらかの駅前で会い、帰りの列車から逆算して一日の予定を決めるほうが現実的です。
国道49号を西へたどると、平から好間、三和を抜けて平田村に入ります。平田村も、いわき市と境を接する村です。標高500mから700mのなだらかな山間地に広がり、村内には鉄道が通っていません。平田村で出会いを求める人との約束は、車での移動が前提になります。待ち合わせの目安は、国道49号の道中にあたるいわき市三和地区。山頂が公園になっている水石山(735m)もこの地区にあり、合流したあとの行き先にも困りません。
常磐線で浜通りを北へ
大熊町に暮らす相手と会うなら、待ち合わせ場所はいわき駅の改札口で足ります。浜通りを北へ進んだ大熊町には常磐線の大野駅があり、いわき駅とは乗り換えのいらない一本の列車でつながっています。
水郡線の町へは県道と国道289号で
周辺の町のうち石川町、浅川町、塙町の三つは中通りの南部にあり、いずれも水郡線の駅を持っています。どの町もいわきとは鉄道で直接つながっていないため、行き来には車を使うことになります。
県道14号いわき石川線の先にあるのが石川町です。磐城石川駅のある町で、母畑温泉や猫啼温泉といった温泉地を抱えています。石川町で出会いを探す相手とは、県道14号の道のりの途中、古殿町の方面で落ち合うと、互いのハンドルを握る時間をそろえやすくなります。
勿来の名を冠した福島県道71号勿来浅川線は、浅川町まで続いています。この町から来てもらう日の目印には、県道71号のいわき側にあたる勿来地区の勿来の関公園が使え、平の中心部まで来てもらうより道のりは短く済みます。浅川町は例年8月に花火大会が開かれる町で、「花火の里」の名で知られています。
国道289号は、勿来から田人、鮫川村を経て塙町へと延びる道です。塙町は江戸時代に幕府の天領として塙代官所が置かれた町で、そこに暮らす相手と会う日は、この国道の途中にあたる鮫川村の方面まで、それぞれが車で向かう段取りになります。
平の笹飾りと白水阿弥陀堂のライトアップ
平の夏の恒例行事に、駅前の商店街を会場にした七夕まつりがあります。いわき七夕まつりは、2019年に平七夕まつりから今の名前に改められた行事で、例年8月6日から8日にかけて開かれます。期間中はいわき駅周辺の平商店街が歩行者天国になり、合わせて約250基の笹飾りが並びます。最終日の夕方から夜にかけては1981年から続くいわきおどりがあり、じゃんがらのリズムで踊られます。8月6日が平日にあたる年もあるため、仕事の休みを合わせるなら早めに相手と日を決めておくと慌てません。
お盆の時期には、じゃんがら念仏踊りを街で見かけることがあります。主に毎年8月13日から15日にかけて新盆を迎えた家を回り、供養のために踊られる郷土芸能で、いわき市の無形民俗文化財にもなっています。夏にはこのほか、小名浜のいわき花火大会や夏井川流灯花火大会といった花火大会、なこそ夏まつり、四倉ねぶたなど、地区ごとの夏の行事が続きます。
秋の候補は、内郷白水町の白水阿弥陀堂です。平安時代末期の1160年に藤原清衡の娘である徳姫が建立した仏堂で、建物は1952年に国宝となり、浄土式庭園を含む境内は国の史跡です。例年秋頃には紅葉のライトアップとプロジェクションマッピングを組み合わせた「アミダナイト」が開かれ、日が暮れてから照らし出される堂と庭園を眺められます。堂の公開状況は、出かける前に最新の告知で確かめておきましょう。
紅葉の時期には、夏井川渓谷にも足を向けたくなります。磐越東線の小川郷駅から川前駅にかけての線路は夏井川渓谷に沿って上っていき、この一帯は春の岩ツツジと秋の紅葉で知られています。小川地区には夏井川渓谷県立自然公園の背戸峨廊や草野心平記念文学館があり、車で一日かけて回るのに向いた地区です。
体を動かす休日なら、沿岸に整備された「いわき七浜海道」があります。防潮堤を兼ねたサイクリングロードで、一部の区間から利用が始まりました。スポーツ観戦が好きな二人には、いわきFCも身近な存在です。いわき市と双葉郡の8町村をホームタウンとするJリーグのクラブで、ホームスタジアムはハワイアンズスタジアムいわき、練習拠点は2016年に常磐地区で完成したいわきFCパークです。2022年にはJ3で優勝し、J2への昇格を決めました。2025年には、新しいスタジアムの整備候補地を小名浜港の区域とする発表もありました。同じチームを応援する時間は、言葉を重ねるのとは別のかたちで距離を縮めてくれます。
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