三つの駅と一本の商店街、川越の暮らしの軸
1922年に埼玉県で初めて市制を施行したのが川越市で、いまは県中部の中核市です。江戸時代には川越街道と新河岸川の舟運によって江戸と直結していました。地形でいえば武蔵野台地の北東の端にあたり、荒川と入間川が市内で合流します。台地の上にある南西部の福原・大東地区では葉物野菜が育てられ、北や東の川沿いの低地に広がる芳野・山田・名細・古谷では稲作が続いています。駅前の繁華街とは違う、田畑の多い地区も同じ市の中にあるわけです。
市内の駅は10、ホームの一部が川越市側にかかる鶴ヶ島駅を入れると11を数えます。JR川越線は南古谷・川越・西川越・的場・笠幡、東武東上線は新河岸・川越・川越市・霞ヶ関、西武新宿線は南大塚・本川越が市内の駅です。乗り降りする人が集中するのはターミナルの川越駅ですが、その流れは川越市駅と本川越駅にも分かれていきます。三つのうち、JRと東上線の両方に乗れるのは川越駅だけです。同じ川越に住んでいても、使う線が違えば「駅前」と聞いて思い浮かべる場所は人によって別々です。
川越駅の東口から北へ延びるのがクレアモールです。川越サンロード商店街と川越新富町商店街をまとめた呼び名で、電線は地中に移され、路面には御影石が敷かれています。平日でも人通りが多く、地元の若い世代や近くから通う高校生・大学生、年配の人までが行き交います。勤め先からまっすぐ向かう社会人どうしなら、改札を出てそのまま歩き出せるこの通りが、短く会う日の使いやすい舞台になります。一本道の商店街なので、「クレアモールの駅側の入口」と伝えれば待ち合わせ場所の説明も簡単です。
市内に大学のキャンパスがいくつも置かれている点も、この街らしさです。東洋大学、東京国際大学、東邦音楽大学、尚美学園大学、埼玉医科大学がそれぞれ川越キャンパスを置き、県西部の大学どうしで彩の国大学コンソーシアムも結んでいます。学生時代に通学で川越を使っていた相手なら、いまは別の街に住んでいても、駅前の思い出話から会話に入れます。
川越で出会いを探し始めたら、メッセージの段階で相手の最寄りがJR、東上線、西武新宿線のどれなのかを聞いておくと、三つの駅のどこで会うかがすぐに決まります。
鉄道とバス路線でつながる川越周辺の町
川越市と境を接する自治体は11あり、坂戸市・鶴ヶ島市・三芳町・川島町もその中に入ります。桶川市・北本市・志木市・吉見町は川越と境を接してはいませんが、東上線や路線バスで中心街まで乗り換えなしで来られる町もあります。
東上線を西へ、鶴ヶ島と坂戸
東上線で川越市駅から霞ヶ関駅を過ぎると、市境の上に鶴ヶ島駅があります。所在地は鶴ヶ島市ですが、ホームの一部は川越市側にかかり、駅の周りでも二つの市が入り組んでいます。関越自動車道と圏央道が交わる鶴ヶ島ジャンクションもこの市にあります。鶴ヶ島に暮らす人と会う段取りなら、二つの市の生活圏が重なるこの駅の周辺か、川越寄りの霞ヶ関駅が落ち合う場所になります。
その先の若葉・坂戸・北坂戸が坂戸市内の駅で、坂戸駅からは東武越生線が分かれます。1970年代に東京のベッドタウンとして北坂戸団地などの住宅地が開かれた市です。坂戸で出会いを探している人と初めて会うなら、東上線一本で出てこられる川越市駅や川越駅の周辺にすると、相手の帰り道も迷いがありません。
南へ延びる川越街道と東上線、三芳町と志木市
南で川越と接する三芳町には、川越街道(国道254号)と関越自動車道が南北に通っています。車の相手なら川越街道を北へ走れば市街地に入れるので、最初は中心街まで来てもらう形が自然です。電車を使う人には、町の最寄り駅の一つである東上線のふじみ野駅で合流する手もあります。
新河岸川の舟運で栄えたのは川越だけではなく、志木市でも引又河岸が商業地として発展しました。いまは東上線で一本につながっていて、志木駅から川越駅までは同じ電車に乗ったまま着きます。川越駅の東口で待ち合わせれば、相手は改札を出てすぐクレアモールに入れます。
荒川寄りの北と東へは、川越駅東口と本川越駅からバスで
荒川・越辺川・都幾川・入間川・市野川の5本の川に囲まれた輪中が、北で川越と接する川島町です。「川島」という名前もこの地形から付いたとされています。町内を走る鉄道はなく、川越駅東口や本川越駅から東松山駅方面などへ向かう路線バスが町を通ります。川島で出会いを探すときは、バスの発着点である本川越駅の周りを待ち合わせに使えば、相手は乗り継がずに来られます。
川島町のさらに北、市野川を越えた先が吉見町です。7世紀ごろの横穴墓が集まる「吉見百穴」で知られ、川越駅から本川越駅を経て鴻巣駅へ向かう路線バスが町を通っています。吉見で出会いを見つけたい人とは、このバスの始発側にあたる川越駅東口で会うのが分かりやすいでしょう。
荒川の対岸にある桶川市は、中山道の桶川宿として栄えた町です。江戸時代には周辺で育てられた紅花が「桶川臙脂」の名で知られていました。川越駅東口と桶川駅西口のあいだには本川越駅を経由する路線バスがあり、二つの街をバス一本で結んでいます。待ち合わせは、このバスの両端の駅のどちらかに決めておくと迷いません。
同じく荒川の東側に位置する北本市には、JR高崎線の北本駅があり、市内には北本自然観察公園があります。電車で行き来するなら、JR川越線で大宮へ出て高崎線に乗り換える行き方が考えられます。北本に住む相手とは、乗り換えるとすれば通ることになる大宮で落ち合うのも一案です。
時の鐘の下で会うか、クレアモールで会うか
川越で初めて会う場所は、大きく二つに分かれます。川越駅東口の周辺と、蔵造りの町並みが残る旧市街です。1999年、旧市街の約7.8ヘクタールは国の選定で重要伝統的建造物群保存地区となり、いまは小江戸の名で観光客も訪れる一帯です。平日の夜は駅前、週末の昼は旧市街と分けて考えると、初回の流れが組み立てやすくなります。
| 候補 | 目印になるもの | 合う場面 |
|---|---|---|
| 川越駅東口 | ロータリーに立つモニュメント | 仕事帰りの合流 |
| クレアモール | 御影石の路面と電線のない空 | 平日夕方の短い食事 |
| 川越一番街 | 蔵造りの町並み | 晴れた日の昼の散歩 |
| 菓子屋横丁 | 昭和の雰囲気が残る小さな店の並び | 食事の前の寄り道 |
| 喜多院 | 830年創建と伝わる天台宗の寺 | 静かな境内での会話 |
| 川越水上公園 | 約44.6ヘクタールの県営公園 | 広い園内の散歩 |
| 伊佐沼公園 | 市の東部にある沼のほとり | 郊外へ足を延ばす日 |
駅前で会うなら、東口のロータリーにある「時世」が目印になります。平成の時の鐘と位置づけられた藤田久数の作品で、午後6時、9時、0時に夜空へ光を放つように作られています。改札を出てから相手を探すより、この像の前と決めておくほうが合流は早く済みます。
旧市街で目印にしやすいのは、本家の時の鐘です。いまの鐘楼は1893年の川越大火の翌年に建て直された3層、高さ16メートルの建物で、現在も機械仕掛けで1日4回鐘を鳴らしています。「日本の音風景100選」(環境省)にも選ばれました。鳴る時刻を調べて、その少し前に鐘楼の下で落ち合えば、最初の話題を探す必要がありません。鐘楼そのものの公開状況は時期によって変わることがあるので、外から眺めて目印にする使い方なら当てが外れません。
菓子屋横丁は、1796年に江戸菓子を作り始めたのが始まりとされる路地です。昭和の初めには70軒ほどが軒を連ねていましたが、いまは20軒ほどに減り、昭和の雰囲気を残す一角になっています。「かおり風景100選」(環境省)の一つでもあり、甘いものの好みを聞くきっかけになります。
喜多院には、徳川家光が生まれた部屋とされる「家光誕生の間」や「春日局化粧の間」が、江戸城の紅葉山から移されています。将軍ゆかりの部屋がなぜ川越の寺にあるのか、その一点を入口にすれば、境内を一周するあいだ話題が途切れにくくなります。
天気が崩れそうな日は、大正浪漫夢通りの事情を知っておくと役立ちます。かつて「銀座商店街」と呼ばれたアーケード街でしたが、屋根は撤去され、いまは大正期の家並みと石畳が見られる通りです。雨をしのげる造りではないので、降りそうな日は駅に近い店で過ごす時間を長めに取り、旧市街は短く歩く程度にとどめると無理がありません。
駅から旧市街への足には、レトロなボンネットバスで名所を回る小江戸巡回バスや、1日乗り放題の小江戸名所めぐりバスがあります。運行日や時刻には変更が入る場合もあるため、当日の朝に調べてから出かけると安心です。行きは歩いて帰りだけバスにすると、歩き疲れたころに座って話せます。
川越水上公園へは、JR川越線の西川越駅から歩いて約15分です。夏には大型プールが営業し、その時期は川越駅と本川越駅から臨時の直通バスも出ます。駅前から離れるぶん、何度か会ってから誘うほうが自然です。
風鈴の夏と山車の秋、川越で付き合いを育てる一年
春は新河岸川の河川敷へ
例年3月下旬には、新河岸川の河川敷で新河岸川桜まつりが開かれます。同じころから5月にかけては、小江戸川越春まつりの催しが市内の各所で続き、5月の民踊大会で締めくくられます。会場が一か所に限られない催しなので、二人の住まいに近い会場を選ぶ相談から次の予定が決まっていきます。二度目の約束をどう切り出すか迷うときも、桜の時期の河川敷なら誘う側も受ける側も気負わずにすみます。
縁結びの社で過ごす夏
川越氷川神社は夫婦と家族の神を祀り、古くから縁結びの神としても信仰されてきました。例年、初夏から9月ごろにかけては「縁むすび風鈴」が行われ、約2000個の江戸風鈴が境内を彩ります。付き合い始めた二人なら、願い事を目当てにするより、風鈴の鳴る境内を並んで歩くこと自体を目的にすると気楽に過ごせます。
例年7月下旬には川越百万灯夏まつりもあり、本川越駅の前から札の辻方面へ続く通りが会場になるとされます。1850年に川越藩主をしのんで切子灯籠を掲げたのが始まりと伝えられ、日が傾いてから灯りの並ぶ通りを歩けるのも夏向きです。風鈴の会期も百万灯の日取りも夏ごとに決め直されるので、声をかけるのは神社や主催者の発表が出てからにすると行き違いがありません。
秋は山車、晩秋は菊と茶会
10月の川越まつりは、例年は第3日曜日と前日の土曜日の2日間にわたる祭りで、重要無形民俗文化財として国の指定も受けています。中心街が見物客で埋まるので、初対面の日には向きません。交際がある程度続いてから出かけるなら、人波ではぐれたときに落ち合う場所を先に決めておくと、慌てずに山車を見て回れます。
11月に入ると喜多院で小江戸川越菊まつりが始まり、例年11月初旬には小江戸川越大茶会も開かれます。山車の囃子が響く10月とは違い、菊を眺めたり茶席に座ったりする落ち着いた催しなので、婚活で知り合った相手と将来の話をする日にも合います。
水辺へ出る三度目、入間川と伊佐沼
街なかでのデートが重なってきたら、市街地の外側へ目を向けるのも一案です。入間川沿いには入間川サイクリングロード(県道川越狭山自転車道線)が通り、川の流れに沿って自転車で走れます。伊佐沼公園には、福原地区にあった萱葺きの古民家、旧戸田家住宅が「伊佐沼庵」として移築されていて、沼のほとりを歩きながら古い暮らしの話ができます。どちらも駅前のにぎわいから離れているので、会話がゆっくり続く日に向いています。
伊佐沼は市の東部にある自然の沼で、例年7月ごろには古代蓮が見頃を迎えるとされます。夏に郊外へ誘うなら、花の時期に合わせて朝のうちに沼のほとりを歩き、昼前には街なかへ戻るという組み立て方もできます。
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