二つの駅と矢作川、一日目の歩き方
待ち合わせの目印として覚えておきたいのは、名鉄の豊田市駅と愛環の新豊田駅を結ぶペデストリアンデッキです。三河線や豊田線で来る人も、愛知環状鉄道で来る人もここに出てくるので、改札の名前を伝え合うより「デッキの上で」と決めたほうが迷いません。駅のまわりは再開発で複合商業施設が整えられてきた一帯で、軽く食事をする場所も駅の近くで探せます。
デッキから東へ歩くと、矢作川に架かる豊田大橋に出ます。1999年に開通した橋で、設計は黒川紀章。対岸の豊田スタジアムも同じ建築家の手によるもので、2001年に開業しました。橋のアーチとスタジアムの屋根の曲線が呼応するように見え、渡る途中で足を止めて眺めたくなる景色です。スタジアムは千石町にあり、名古屋グランパスのホームとして使われ、ラグビーワールドカップ2019日本大会の試合会場の一つにもなりました。試合のある日なら、観戦そのものを二人の予定にできます。
静かに話したい日は、小坂本町の豊田市美術館へ向かう手があります。1995年に開館した谷口吉生の設計による建物で、水盤と彫刻の庭はランドスケープ・アーキテクトのピーター・ウォーカーが手がけました。敷地には茶室「童子苑」もあります。北隣には2024年4月に豊田市博物館が開館し、とよたの自然と人々の営みを紹介しています。作品や展示を前にすると話題を探す必要がなく、初対面の緊張がほどけるまでの時間をつなげます。
待ち合わせから解散までを一つの流れで考えるなら、デッキで会い、豊田大橋を渡って対岸からスタジアムの外観を眺め、駅側へ戻って食事をすれば一日がきれいにまとまります。すべて歩いて回れる範囲なので、車を出す必要も駐車場を探す手間もありません。帰りは相手がどちらの駅から乗るかを聞き、改札まで送れば、最初の日としては十分です。
夏の豊田は真夏日が年に70日前後あり、名古屋と大差のない蒸し暑さです。暑い時期の昼間は美術館の中でゆっくりし、夕方になってから橋へ出る順番にすると、相手を炎天下で歩かせずに済みます。
駅から歩ける範囲の外にも、豊田の出会いスポットとして挙げられる場所があります。いずれも中心部から離れているので、二回目以降に行き先を広げたいときの候補です。
| 行き先 | 場所・行き方 | 過ごし方のヒント |
|---|---|---|
| 鞍ヶ池公園 | 東海環状自動車道の鞍ヶ池PAに隣接、車で行く風致公園 | 桜は約1,500本、例年3月下旬から4月上旬が見ごろ。芝生広場や植物園もある |
| 猿投山 | 猿投町と瀬戸市の境、標高629.0m | 歩き慣れた二人の山歩きに。麓一帯は桃の花、猿投地区には猿投七滝もある |
| 松平郷 | 市の郊外 | 松平氏発祥の地。落ち着いた半日の遠出に |
挙母市から7地区の豊田市へ、街のなりたち
1958年まで、この街は挙母市と呼ばれていました。1998年に中核市となり、2005年には藤岡町・小原村・足助町・下山村・旭町・稲武町を編入しています。いまの市域は豊田・藤岡・小原・下山・足助・旭・稲武の7地区に分かれ、旧豊田市にあたる豊田地区も挙母・高橋・上郷・高岡・猿投・松平の6地区に分かれます。
同じ豊田市民でも、駅まで歩ける挙母の人と、標高505mの稲武に住む人とでは、毎日目にする景色がまるで違います。やりとりの早い段階で住んでいる地区の名前を聞けば、相手がどれくらいの距離を動いて会いに来るのかが見えてきます。
線路が通るのは市の西側だけ
市内を走る鉄道は4路線で、JRの線路は通っていません。名鉄三河線は猿投駅から豊田市駅を通って知立方面へ、名鉄豊田線は梅坪・上豊田・浄水の各駅を経て名古屋方面へ延びています。愛知環状鉄道は八草駅から新豊田駅を経て三河上郷駅まで市内を通り、八草駅ではリニモに乗り換えられます。
どの路線も市の西部に偏っていて、東部の山あいには鉄道がまったくありません。そのため、足助や旭、稲武のほうに住む人は、ふだん車で動いていることが多いと考えられます。市内には元町通り、いちょう通り、けやき通り、内環状線・外環状線といった通称のついた道路があり、車で待ち合わせを決めるときの目印になります。
通勤の街、学生の街、休みの曜日
豊田市は、市外へ出ていく人より市外から通勤・通学で入ってくる人のほうが多い街です。自動車関連の会社の従業員に合わせ、会社のカレンダーどおりに営業する個人商店も少なくありません。社会人どうしで会う約束を立てるなら、マッチングアプリでやりとりしている段階で休みの曜日を確かめ合っておくと、最初の日取りが決めやすくなります。
市外から通勤してくる相手と仕事帰りに会う日は、その人が帰りに乗る路線の駅の近くを選ぶと、終電や帰りの時間を気にせずに話せます。
学生の暮らしも街の一部です。愛環の貝津駅のある貝津町には中京大学豊田キャンパスが、八草駅のある八草町には愛知工業大学があり、ほかに日本赤十字豊田看護大学、愛知学泉大学豊田キャンパス、豊田工業高等専門学校も市内にあります。名前に豊田とつく豊田工業大学は名古屋市天白区にあるので、相手の通学先を聞くときに取り違えないようにしたいところです。
貝津駅も八草駅も愛環の駅なので、大学の近くに住む相手とは、同じ線で新豊田駅まで出てきてもらえば乗り換えなしで会えます。
浄水・知立・八草の先にある8つの市と町
豊田市と境を接しているのは、みよし市、日進市、知立市、長久手市などです。東郷町、豊明市、尾張旭市、大府市は境こそ接していないものの、電車やバスを組み合わせれば行き来できます。豊田線は名古屋方面へ、三河線は南の知立へ、愛環は北西の八草へと延びていて、相手の沿線ごとに会う駅の候補が変わります。
名鉄豊田線で西へ、みよし市・日進市・東郷町
浄水駅の次、三好ヶ丘駅からはもうみよし市です。市内には黒笹駅と三好ヶ丘駅があり、桜の名所として知られる三好池もあります。みよし市で出会いを探す相手となら、隣り合う浄水駅と三好ヶ丘駅のどちらかの駅前で会えば、行き来に時間がかかりません。
同じ線を名古屋側へ進むと、米野木・日進・赤池の3駅がある日進市に入ります。複数の大学のキャンパスが置かれた市でもあります。日進市で恋人探しをしている相手とは、両市のあいだにあたるみよし市の黒笹駅や三好ヶ丘駅で落ち合い、そのまま名古屋まで出る予定なら赤池駅を待ち合わせにしても構いません。
東郷町には鉄道の駅がなく、最寄り駅は町の外にある豊田線の日進駅・米野木駅・黒笹駅です。周囲およそ8kmの愛知池も東郷町にあります。相手がバスや車で黒笹駅か米野木駅まで出てくれば、豊田からは豊田線一本で合流できます。
三河線の先にある知立市、豊明市、大府市
豊田市駅から南へ向かう三河線に乗れば、乗り換えなしで知立駅に着きます。知立駅は名鉄名古屋本線と三河線が交わる駅です。知立で出会いを求める人とは、知立駅か、途中にある豊田市内の土橋駅で落ち合う形が考えられます。かきつばたで知られる無量寿寺と八橋も知立市にあり、春の約束の行き先になります。
豊明市には名古屋本線の豊明駅と前後駅があり、市内には1560年の桶狭間の戦いにちなむ桶狭間古戦場伝説地が残ります。豊田からは三河線で知立駅まで来て名古屋本線に乗り換える経路になるため、待ち合わせは知立駅の改札が自然です。
JRで動く相手なら事情が少し変わります。大府市の大府駅はJR東海道本線と武豊線が分かれる駅で、市は2006年にWHOの健康都市連合に加盟しました。大府市での出会いを考えるときは、豊田側が三河線で刈谷駅まで出て、同じ東海道本線上の大府駅から来る相手と刈谷駅の周辺で会う形が現実的です。
愛環とリニモで北西へ、長久手市と尾張旭市
八草駅で愛知環状鉄道からリニモに乗り換え、陶磁資料館南駅を過ぎると長久手市に入ります。市内には愛・地球博記念公園(モリコロパーク)があり、愛知県立大学や愛知県立芸術大学などの大学も集まっています。長久手市に暮らす相手とは乗換駅の八草駅で落ち合ってもいいですし、公園へ行く日はリニモの愛・地球博記念公園駅の改札前で会うと、降りてすぐ歩き出せます。
尾張旭市は豊田市と境を接していないので、あいだにある瀬戸市の駅を使います。豊田からは愛環で瀬戸市駅へ向かい、尾張旭に住む相手には名鉄瀬戸線で新瀬戸駅まで来てもらえば、隣り合う二つの駅で落ち合えます。駅前で昼食の店を決めておけば、そこから先の行き先は会ってから二人で相談できます。
おいでんの夏、挙母祭りの秋、香嵐渓の11月
豊田の季節の行事には、駅前や矢作川沿いを会場にするものと、足助や小原など山あいの地区で開かれるものがあります。どれも年によって日程や内容が変わるので、出かける前にその年の予定を確かめてください。
冬の終わりは足助の町並みへ
足助はかつて「塩の道」と呼ばれた中馬街道の宿場町で、古い町並みは「豊田市足助伝統的建造物群保存地区」として国に選定されています。例年2月から3月にかけて開かれる「中馬のおひなさん」では、町並み一帯の商家など約140軒に雛人形や三河の土雛が飾られます。足助へは車で向かうことになるので、迎えに行くのか途中で落ち合うのかは、約束を決める段階で一緒に話しておきましょう。
7月下旬のおいでんまつりは土曜と日曜で会場が違う
豊田おいでんまつりは、例年6月から7月にかけて市内各地で「マイタウンおいでん」が続き、7月下旬の土曜に豊田市駅の東側一帯でおいでん総踊り、翌日の日曜に矢作川河畔の白浜公園一帯で花火大会という流れです。踊りを見るなら駅前、花火なら川沿いと場所が分かれるため、どちらの日に会うかを決めてから集合場所を選ぶと無駄に歩かずに済みます。
10月は挙母祭り、11月は香嵐渓と小原
挙母祭りは江戸時代から続く祭りで、例年10月第3日曜が本楽祭、その前日の土曜が試楽祭です。県の有形民俗文化財でもある8台の山車が挙母神社に曳き込まれ、夜には矢作川で奉納花火が上がります。豊田市駅や新豊田駅から歩いて行けるので、昼に駅で待ち合わせ、山車を見てから花火まで一緒に過ごす一日も組めます。
11月は東の山あいが色づく時期です。香嵐渓もみじまつりは例年11月の1か月間、足助の香嵐渓で開かれ、約3,000本のもみじが見られます。期間中は夜のライトアップもあります(時間は年により異なります)。香嵐渓はもみじだけでなく、カタクリの名所としても知られています。
小原地区には四季桜が約1万本あり、3月中旬から4月上旬の春と、10月下旬から12月下旬の秋、年に2回花をつけます。例年11月下旬から12月上旬ごろに開かれる小原四季桜まつりの時期なら、桜と紅葉を同じ景色の中で見られます。香嵐渓や小原へ車で出かけるなら、紅葉の季節の週末は朝のうちに出発する計画にすると、一日に余裕が生まれます。
地区ごとに受け継がれる棒の手と盆踊
豊田には、季節の大きな祭りとは別に、地区ごとの郷土芸能が残っています。棒の手は猿投・挙母・松平・足助など市内各地に伝わる芸能で、なかでも猿投の棒の手は室町時代から続くとされます。猿投神社の猿投祭では、この棒の手が見どころになります。綾渡に伝わる夜念仏と盆踊は、国の重要無形民俗文化財です。相手の育った地区にどんな行事があるかを聞くと、その人の子どものころの話にも自然につながります。
豊田東西線の呼び名と、郊外の景勝地
郊外へ出かける計画を立てていると、豊田東西線という道路の名前を耳にすることがあります。国道153号と国道301号の一部をまとめた通称なので、道順を二人で確かめるときは、国道の番号と通称を照らし合わせながら地図を見ると話がかみ合います。
付き合いが深まったら、郊外の景色を目当てにした日帰りの遠出も候補に入ります。勘八峡のような景勝地があり、旭・稲武・笹戸には温泉地もあります。どこへ行くにしても運転する側の負担は大きいので、行きと帰りで運転を代わる、早めの時間に出発して明るいうちに市街地へ戻るといった段取りを二人で決めておきたいところです。こうした段取りを自分から提案できれば、相手も次の遠出に誘われたときに返事がしやすくなるはずです。
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