江戸川の東岸と、乗り換えられない線路の街
市の西の境を江戸川が南北に流れ、対岸はもう埼玉県です。川沿いと市の南部は平らな低地で、中部から北部は下総台地の一部にあたり、ゆるやかな起伏の上に住宅地と畑が続きます。北部には利根運河が通り、市内を大堀川も流れています。
かつての流山は、江戸川や利根運河の舟運で白みりんを送り出して栄えた町で、明治期には葛飾県庁も置かれていました。地名については、群馬県の赤城山が崩れ、その大きな欠片が利根川を流れ下ってこの地に着いたという言い伝えが残されています。
住宅地としての歩みは、江戸川台や松ケ丘の開発から始まりました。流鉄流山線の沿線もかつては雑木林や農地が目立ち、宅地化が進むにつれて東京23区へ通勤する人の利用が増えていきます。開発はいまも続き、子育て世帯に選ばれてきた住宅都市という顔を持つようになりました。
この街を語るうえで外せないのが鉄道の事情です。流鉄流山線、東武野田線、JR武蔵野線の三路線が市内を走るようになったものの、どの線も市内では互いに接続しておらず、地域どうしの結びつきは弱いままでした。その状態を変えたのが2005年に開業したつくばエクスプレス(TX)です。TXは南流山駅で武蔵野線と、流山おおたかの森駅で東武野田線と交わり、都心へ出る道も良くなりました。ただ、流鉄流山線とTXは立体交差するだけで、乗り換えのできる駅はありません。
同じ市内に住む二人でも、片方が流鉄の沿線、もう片方が東武野田線の江戸川台や初石の近くという組み合わせでは、会いやすい場所がまるで違ってきます。流山で出会いを探すなら、流鉄の沿線に住む相手とは流山駅で降りて本町の町並みを、東武野田線やTXの沿線に住む相手とは流山おおたかの森の駅前を最初の待ち合わせに充てると、どちらの相手も乗り換えなしでたどり着けます。
流山おおたかの森という地名は、もともとありませんでした。駅名は、近くの市野谷の森にオオタカのすむ森が広がることと、市内に緑が多く残ることに由来します。地域の名前として定着し、駅周辺の町名がおおたかの森北・東・南・西に改められました。
対照的な存在が、流山駅と馬橋駅を結ぶ流鉄流山線です。全長5.7キロ、6駅の単線を2両編成の電車が行き来する路線です。
学生の姿が見られるのは、駒木に本部を置く江戸川大学(社会学部とメディアコミュニケーション学部)の周辺と、運河駅を最寄りとする東京理科大学野田キャンパスのまわりです。野田キャンパスは市境にまたがり、流山市側に入るのはその一部です。
行灯の本町、運河の水辺、オオタカの森の駅前
初めて会う場所は、TXの駅前で一日をまとめるか、流鉄に乗って流山本町まで足を延ばすかで組み立てが分かれます。相手の暮らす地区はマッチングアプリの画面からは見えにくいため、候補を二つほど挙げて相手に選んでもらう形にすると、無理のない初回になります。
| 行き先 | 電車で降りる駅 | 合いそうな一日 |
|---|---|---|
| 流山本町の町並み | 流鉄 流山駅・平和台駅 | 古い商家の並ぶ通りを散歩する日 |
| 一茶双樹記念館 | 流鉄 平和台駅 | 縁側でお茶を飲みながら話したい日 |
| 流山市白みりんミュージアム | 流鉄 平和台駅 | 料理の話が好きな相手と会う日 |
| 利根運河と運河水辺公園 | 東武野田線 運河駅 | 晴れて水辺を歩きたい日 |
| 市野谷の森公園 | 流山おおたかの森駅 | 池のまわりを短く歩く日 |
| 流山おおたかの森駅の駅前 | TX・東武野田線 流山おおたかの森駅 | 雨の日や映画を観たい日 |
流山本町の古い町並み
流山駅の周辺には古民家が多く残り、カフェや交流の場、宿として使い直す取り組みが進んでいます。江戸川沿いの歴史的な町並みは、行灯がともることから「行灯回廊」や「江戸回廊」とも呼ばれます。見世蔵、呉服新川屋の店舗、国の登録有形文化財である寺田園の旧店舗、切り絵行灯が並び、通りを一往復するだけでも見どころは途切れません。
本町の散策を少し広げたい日には、流山七福神の札所めぐりもあります。千葉県内で初めてできた霊場とされ、札所の寺院それぞれに七福神の石像が安置されています。全部を回らずに二、三か所で切り上げても、町歩きの目的としては十分です。
近藤勇陣屋跡は、酒造家だった永岡三郎兵衛の屋敷があった場所です。新政府軍に町を囲まれた際、近藤勇が単身で投降したため、流山では戦闘が起こりませんでした。陣屋に使われた建物は取り壊されて今は駐車場になっていますが、跡地に建つ「秋元家住宅土蔵」は国の登録有形文化財となり、市へ寄贈されています。
醸造会社の工場の外壁を使った「流山本町まちなかミュージアム」は、白みりん誕生200年を記念して設けられた屋外展示です。昔のみりんのラベルや広告を、時刻を気にせずに見られるので、待ち合わせが夕方にずれ込んだ日でも立ち寄れます。流鉄の流山駅と平和台駅はどちらも本町の最寄りです。往路と復路で降りる駅と乗る駅を分ければ、同じ道を引き返さずに町並みを通り抜けられます。
縁側のある記念館と、みりんの体験施設
一茶双樹記念館は、小林一茶と、みりん醸造の祖のひとりで俳人でもあった秋元三左衛門(俳号は双樹)の交流を伝える施設です。一茶は流山を50回以上訪れています。秋元本家、双樹亭、一茶庵の三棟と枯山水の庭があり、縁側で景色を眺めながらお茶を楽しめるので、歩き疲れる前に腰を落ち着ける場所として使えます。開館は9時から17時までです。
流山市白みりんミュージアムは2025年に開館した体験型の施設です。歴史と製法をたどる展示に加えて、みりんを使った料理を体験できるキッチンスタジオがあります。どちらの施設も月曜が休館日で、平日に会うなら曜日を先に確かめておきます。
利根運河の水辺
利根運河は利根川と江戸川を結ぶ全長8.5キロの運河で、オランダ人技師ムルデルの指導で造られました。にぎわったのは開通からわずか20年ほどで、運河会社は桜並木を植えて観光地にしようとし、江戸川口の近くまで店が並んだといいます。いまの運河駅の周辺には運河水辺公園や利根運河交流館、ムルデルの顕彰碑、ビリケン像があり、のんびり過ごせる水辺になっています。夏の土手は日差しをさえぎるものが少ないので、暑い時期は夕方に回すほうが楽に歩けます。
駅名の森と、駅前の商業施設
市野谷の森公園は千葉県の県立都市公園で、市野谷と三輪野山にまたがります。開設されている区域には修景池と多目的広場、駐車場があり、使えるのは計画の一部です。森の中を長く歩く場所というより、池の周りをひと回りして話す場所と考えておくと当てが外れません。市内にはほかにも大堀川水辺公園や野々下水辺公園、市野谷水鳥の池といった水辺の名を持つ公園があります。
流山おおたかの森駅の前には、開業後に別館を加えてきた大型の商業施設があり、館内には映画館も入っています。高架下にも商業スペースがあります。天気が崩れても駅から離れずに過ごせるので、初めて会う日の予備の行き先として覚えておくと安心です。
武蔵野線とTXで結ぶ、江戸川の向こうと利根川の先
江戸川を渡る武蔵野線か、南北に延びるTXか。周りの市町で暮らす相手と落ち合う駅は、その人の使う線でほぼ決まります。
武蔵野線で江戸川を渡る吉川市
江戸川の対岸で流山と接する埼玉県の吉川市は、川をはさんだ縁が古くからある町です。かつて、江戸川の西岸にあった平方新田と深井新田の飛地が、千葉県側の新川村から三輪野江村へ移されました。新川村はおおむね今の流山市の江戸川台より北にあたり、三輪野江村は今の吉川の一部です。
吉川も古くは舟運で栄えた町です。吉川で出会いを探す人から見ると、南流山駅は武蔵野線に乗ったまま着ける駅なので、初めて顔を合わせる場所に向いています。
TXを南へ、八潮市
TXで都心の方向へ向かうと、三郷を過ぎて埼玉県八潮市の八潮駅に着きます。流山と境は接していない市です。八潮という名は、潮止村と八条村の一部、八幡村が合わさって生まれた村の名を受け継いでいます。八潮寄りにある南流山なら、相手はTXを降りてすぐ待ち合わせ場所に着けます。
三つの川に囲まれた守谷、水田の広がるつくばみらい
流山と同じく、川の舟運と縁の深い町が茨城県の守谷市です。北東を小貝川、西を鬼怒川、南を利根川に囲まれ、江戸時代には利根川下流から関宿や江戸川方面へ向かう水運の中継地でした。地名には、平将門がこの地を「守るに易き谷」と評したことに由来するという説も伝わります。守谷での出会いを考えている人とも、TXに乗ったまま来られる流山おおたかの森駅の改札前なら、初回の目印として迷いません。
さらに北のつくばみらい市には、鬼怒川と小貝川が流れています。小貝川の東岸に広がる低地は「谷原領3万石」と呼ばれる水田地帯で、江戸時代に関東郡代の伊奈忠治が開いた土地です。市内のみらい平駅もTXの駅なので、待ち合わせ先は守谷の相手と変わりません。駅前で食事にするか市野谷の森公園まで歩くかは、会ってから空模様で選べます。
柏方面から北総線へ、白井市
白井市は、名前に「色」がつく全国8つの駅にポスターを貼り、市の名前を正しく読んでもらうための取り組みをしたことがあります。流山とは接しておらず、北総線の沿線から来る場合は柏の方面で乗り換える経路になるため、初回はこちらから相手の乗り換え駅の近くまで出向き、相手の移動を短くする約束が組めます。
新選組の春、しめ縄の秋、流山で続ける付き合い
例年4月には「流山新撰組まつり・勇忌」が開かれ、近藤勇とゆかりのある本町に新選組を好む人たちが集まります。同じ春、東武野田線の運河駅に近い利根運河沿いには桜並木が続きます。冬に知り合った相手なら、花の季節に運河駅で降りて土手を歩く日は、二人の予定として決めやすいはずです。
秋の本町では、江戸川の東岸の小高い丘に建つ赤城神社が舞台になります。先に触れた地名の言い伝えと結びついた神社で、例年10月上旬の大しめ縄行事では、重さ約500キロ、長さ約6.5メートルの大しめ縄が毎年つくられます。行事そのものが、市指定の無形民俗文化財です。
江戸川の堤、流山1丁目から3丁目の地先では流山花火大会が開かれ、対岸の花火大会と同じ日に行われる年もあります。会場に駐車場はないため、流鉄の流山駅か平和台駅から歩いて向かう計画が前提になります。結婚を意識して付き合い始めた相手となら、混み合う夜の帰り道をどうするかまで二人で話し合っておくと、当日を落ち着いて過ごせます。
ほかにも流山市民まつり、流山産業博、森のマルシェ、うんがいい!朝市、利根運河シアターナイトといった催しがあります。流鉄の車両基地を会場にした流鉄BEER電車は、ふだん入れない基地の中で、止めた車両の座席を使って流山や松戸の料理と地元のクラフトビールを楽しむ催しです。お酒が中心なので、飲まない相手との約束には向きません。
TXの流山セントラルパーク駅から流鉄の流山駅、平和台駅までは約1.3から1.5キロです。市内でも離れた地区、たとえばTXの沿線と本町の近くに住む二人なら、互いに途中まで歩いて合流する日も作れます。
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