昼も夜も人がいる府中、街道と駅でつかむ生活圏
1954年4月1日、府中町・多磨村・西府村の1町2村が合併して府中市が誕生しました。江戸時代には甲州街道の宿場の中でも大きな府中宿として栄えた土地で、いまも国道20号や府中街道、小金井街道が市内を通っています。南北の行き来は府中街道と鎌倉街道が軸です。神奈川県の川崎・相模原方面や埼玉県の所沢方面へ延びる二本の道で、県境を越えて車で府中に入るときの入口にもなります。
市域のほとんどは平らな土地で、府中崖線(ハケ)と国分寺崖線が東西に走るところにだけ段差があります。南の端はそのまま多摩川で、市全体が川沿いの段丘の上に広がっています。京王線の府中駅からJRの府中本町駅にかけての一帯が市の中心となる市街地で、大國魂神社もこの範囲にあります。待ち合わせから散歩、食事までを歩いてつなげられるのは、この中心部の使いやすいところです。
統計で見ると、府中は昼間人口と夜間人口がほぼ同じです。近隣のベッドタウンとは違い、働く場所と住む場所が近い職住近接型の街とされています。府中インテリジェントパークには日本銀行をはじめとする金融機関の事務センターが集まり、大規模な事業所もいくつかあります。府中で出会いを探すとき、勤め先も住まいも市内という社会人どうしなら、休日を待たずに平日の仕事帰りに会う約束も組めます。
京王線とJR線が交わる三つの駅
市内には京王線と京王競馬場線、JR南武線と武蔵野線、西武多摩川線が通っています。代表駅は京王線の府中駅で、京王ライナーも停車します。JRの府中本町駅は市役所の最寄りで、南武線と武蔵野線が乗り入れ、武蔵野線の定期旅客列車はこの駅を起点に走ります。開業は1928年です。
京王線と南武線を乗り換えられるのは、府中駅からも府中本町駅からも一駅の分倍河原駅です。1333年の分倍河原の戦いの舞台となった古戦場は、都の文化財に指定されています。
市の東側に目を移すと、東府中駅で京王競馬場線が分かれます。府中競馬正門前駅までの0.9kmしかない路線で、全線が府中市内に収まっています。さらに東の地区を南北に走るのは西武多摩川線です。多磨、白糸台、是政などの駅を結び、武蔵境駅を経由して中央線の沿線ともつながっています。
多磨と北府中にある二つの大学
東京外国語大学は府中市朝日町に本部を置く国立大学で、2000年に北区西ケ原からの移転が始まりました。最寄りは西武多摩川線の多磨駅です。東京農工大学も府中市に本部があり、幸町の府中キャンパスに本部と農学部が置かれています。こちらはJR武蔵野線の北府中駅が最寄りで、府中駅からバスでも通えます。府中キャンパスの歴史は、1935年に東京高等農林学校が府中へ移ってきたところから始まります。キャンパス内には科学博物館があり、農学部本館は登録有形文化財です。
どちらのキャンパスも、府中駅の周りとは別の場所にあります。大学に通う相手や大学で働く相手なら、府中駅まで出てきてもらうより、多磨駅や北府中駅の近くで会うほうが早い場合もあります。
境内と並木と川べり、府中で初めて待ち合わせる場所
最初に会う場所の候補を、使う駅と時間帯ごとにまとめました。
| 行き先 | 駅や行き方 | 会う時間のめやす |
|---|---|---|
| 大國魂神社と馬場大門のケヤキ並木 | 府中本町駅 | 昼の散歩 |
| けやき並木通り | 府中駅 | 夕方から食事まで |
| 府中の森公園、府中市美術館 | 東府中駅 | 晴れた日の午後、雨なら美術館 |
| 府中の森芸術劇場 | 東府中駅 | 公演のある日 |
| 郷土の森博物館 | ちゅうバスか徒歩 | 休日の日中 |
| 多摩川サイクリングコース | 市の南端の河川敷 | 二回目以降の昼 |
六所宮と呼ばれる大國魂神社
大國魂神社は武蔵国の総社で、「六所宮」とも呼ばれ、東京五社の一社に数えられています。府中本町駅に近い市街地の中心にありながら、境内は木々に囲まれています。縁結びの神ともされる神社なので、初対面の日は参拝そのものを目的にせず、散歩の途中で立ち寄るくらいの距離感がちょうどよいはずです。
参道の馬場大門のケヤキ並木は国の天然記念物です。1062年に源頼義・義家の父子がケヤキの苗を千本寄進したのが始まりと伝えられています。境内の東隣は「武蔵国府跡(国衙跡地区)」として国の史跡になっていて、柱の跡が地面に示され、展示室やふるさと府中歴史館もあります。並木から国府跡まで歩くと、食事の前の散歩道が一本の線でつながります。
府中駅の西側を南北に通るけやき並木通りは、府中のメインストリートです。一方通行で、歩行者道路にもなっています。夕方に待ち合わせて通りを歩き、そのまま食事の店を決める流れなら、初対面の日の予定として重すぎません。
東府中の公園と劇場、多摩川沿いの博物館
東府中駅の近くにある府中の森公園は都立公園で、園内に2000年開館の府中市美術館があり、府中の森芸術劇場が隣接しています。公園にはジョギングコースやテニスコートなどの運動施設もあります。劇場の中にはどりーむホール、パイプオルガンを備えたウィーンホール、廻り舞台のあるふるさとホールの三つのホールがあり、劇場は「音響家が選ぶ優良ホール100選」に入っています。演目選びから二人で決められるのも、劇場で会う日のよさです。
郷土の森博物館は、多摩川の是政緑地に隣接する約14haの野外博物館です。江戸中期から昭和初期に市内で建てられた建物が移築復元され、ドームの直径が23mあるプラネタリウムも併設されています。屋内で過ごせる時間があるので、天気がはっきりしない日の候補になります。
雑木林の浅間山と多摩川の河川敷
浅間山(せんげんやま)は標高79.6mの小さな山で、山全体が1970年に開園した都立浅間山公園です。コナラやクヌギの雑木林が残り、山頂には浅間神社の祠があります。雑木林の中の道を歩く日になるので、誘う段階で、足元は歩き慣れた靴でと伝えておくと親切です。
市の南端を流れる多摩川には多摩川サイクリングコースが整備され、自転車で走る人が多く行き交います。対岸に見えるのは多摩丘陵です。初対面で河原を長く歩くより、何度か会ってから自転車で出かけるほうが無理がありません。
南武線と武蔵野線を手がかりに、市境の向こうの相手と落ち合う
西の国立市と南の稲城市は、府中市と境を接しています。東大和市や武蔵村山市、福生市、清瀬市は府中市と接しておらず、南武線の終点の立川駅や、府中本町駅から出る武蔵野線を使って行き来する位置にあります。
南武線で西へ、川を越えて南へ
南武線を府中本町駅から西へ向かうと、分倍河原駅、西府駅と続き、その先が国立市の谷保駅です。初期の甲州街道は府中を出ると谷保付近で崖線を下り、多摩川を渡っていました。いまも甲州街道沿いには蔵のある農家が並んでいます。国立で出会いを求めるなら、会う駅の候補は谷保駅の隣にあたる西府駅と分倍河原駅の二つです。分倍河原駅なら京王線でも南武線でも乗り換えなしで着くので、相手がどちらの沿線に住んでいても行き先を一つに決められます。
多摩川を挟んだ南側は稲城市です。1949年に、府中市の前身の一つである多磨村から、多摩川右岸にあった押立・常久の一部が稲城村に編入されました。川の向こうにも府中と縁のある土地があるわけです。稲城市の市域の形は「勾玉」にたとえられます。稲城での出会いまで範囲を広げるなら、待ち合わせは府中本町駅が手軽です。南武線で稲城市の南多摩駅の隣にあたり、駅の近くには大國魂神社があります。
立川で乗り換える北と西の市町
立川駅まで南武線に乗り通すと、北や西の市町へ向かう路線に乗り換えられます。東大和市は、「東京りんご」というブランドが生まれた土地とされています。東大和市駅から北へ延びる青梅街道沿いの「南街(なんがい)」は、日立航空機の従業員のために開発された地区で、もとは地元から見て南の街という意味で「みなみまち」と呼ばれていました。東大和の相手にも立川方面へ出てきてもらえば、府中側は南武線一本で着きます。
武蔵村山市からは、立川駅北口へ向かうバスが出ています。軽便鉄道の廃線跡を利用した野山北公園自転車道では、鉄道用だったトンネルが今も通り道として使われています。この市の相手とは、バスが着く立川駅北口の側で待ち合わせれば迷いません。
福生市の福生駅は、1894年に青梅鉄道の青梅・立川間が開通したときに開設された駅です。いまはJR青梅線が立川駅から延びていて、市内には玉川上水が通っています。福生や、拝島駅から八高線でさらに北へ向かう瑞穂町で出会いを探す場合も、会う場所は立川駅が目安です。
武蔵野線で北へ、清瀬市
府中本町駅を起点とする武蔵野線に乗れば、東村山市の新秋津駅まで乗り換えずに行けます。新秋津駅と西武池袋線の秋津駅は約400m離れていて、少し歩く乗り換えです。清瀬市は緑地が市域の約46%を占め、南の東久留米市とは野火止用水で境を分けています。清瀬の相手には池袋線で秋津駅まで来てもらい、新秋津と秋津のあいだで会う形が、双方にとって素直な道順です。
梅園と大太鼓と並木のジャズ、府中の一年を二人の予定に
梅は府中市の市の花です。郷土の森の梅園には約60種・約1,100本の梅があり、例年2月の梅まつりの時期に園内がとくににぎわいます。3月末から4月初めごろには、約1kmにわたる桜通りの桜並木が咲き始めから夜間ライトアップされ、府中公園で市民桜まつりが開かれます。黒澤明監督の映画「羅生門」の舞台になった東郷寺も、桜で知られる寺です。京王競馬場線の府中競馬正門前駅が最寄りの東京競馬場は、1933年に目黒から移って開場した場所で、敷地内には日本庭園や公園、JRA競馬博物館があり、春は花見の場にもなります。
ゴールデンウィークの府中は、くらやみ祭の季節です。大國魂神社の例大祭で、例年4月30日から5月6日にかけて行われ、東京都指定の無形民俗文化財です。六張の大太鼓と八基の神輿が市の中心部を巡り、5月3日の夜には6頭の馬が旧甲州街道を3度往復する「競馬式(駒くらべ)」が行われ、5月5日に例大祭を迎えます。人出の多い祭なので、この時期に会うなら改札前ではなく、駅から少し離れた具体的な場所を決めておくほうが確実です。
5月ごろの浅間山では、ムサシノキスゲが花を咲かせます。夏の郷土の森は、6月のあじさいまつり、7月に修景池の大賀蓮を見る会と、2月とは別の花が主役です。大國魂神社では例年7月20日にすもも祭があり、8月には境内で商工まつりが開かれ、同じ月にけやきフェスタもあります。
秋は例年9月、大國魂神社の秋季祭であるくり祭から始まります。10月にはけやき並木通りの周辺でけやき音楽祭 JAZZ in FUCHUが開かれ、例年11月下旬には東京外国語大学の外語祭が5日間続きます。1年生が専攻語の国や地域の料理を出す「料理店」と、2年生以上が上演する「語劇」が、この学園祭の中心になる催しです。11月には郷土の森で農業まつりも開かれます。年末に向けては11月の酉の市、12月の歳の市と、大國魂神社の行事で一年が締めくくられます。
初めて会った日は散歩の途中で通り過ぎた大國魂神社も、恋活が実って付き合いが続いてからなら、縁結びの神として二人で改めて参拝する理由ができます。大太鼓が響くくらやみ祭の時期と、境内が静かな平日とでは、同じ参道を歩いても受ける印象は大きく変わります。
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