高台の上野と下町の浅草、ふたつの顔を持つ街
区の東の端を隅田川が流れ、南の端は神田川に接しています。その内側の西寄りにある上野は、江戸時代から続く寛永寺の門前町として発展してきた地区です。区の中心駅である上野駅は、北関東・東北・信越方面からの玄関口として古くから知られ、新幹線も停車します。JR山手線と京浜東北線のほか、東京メトロ銀座線と日比谷線がここを通るため、区の内外から人が集まってくる起点になっています。
上野駅から一駅南の御徒町駅にかけては、商業地として賑わう一帯です。JRの高架の西側と高架下にはアメヤ横丁、通称アメ横が延び、魚介類や乾物を中心とした食品、衣類、雑貨、宝飾品の店が業種ごとにまとまっています。約500メートルの間に400あまりの店が並びます。通りはJR上野駅と御徒町駅のあいだに延びているので、片方の駅で落ち合って店先をのぞきながらもう一方の駅まで歩けば、帰りの改札を探して迷うこともありません。年末は正月用の食品を買い求める人で通りが埋まるため、その時期に待ち合わせ場所として使うのは避けたほうが無難です。
一方の浅草には、浅草寺や仲見世通りなどの名所が集まっています。この地区には都営浅草線や東武スカイツリーライン、つくばエクスプレスの駅もあり、上野とは別の方向から人が流れ込んできます。
上野と浅草のあいだには、昔ながらの問屋の街並みが続きます。花川戸にはバッグや靴といった皮革製品の卸が多く、浅草から上野にかけては仏壇や仏具の卸が軒を連ねています。日焼けを嫌って北向きに店を構えるところが多いのも、この通りならではです。卸の店が続く通りは、何かを買うためというより、商いの街並みを眺めながら歩く場所と考えれば、手ぶらで出かけても楽しめます。
観光客の多い浅草、文化施設と商店街の上野、問屋の並ぶ中間の通り。同じ区の中でも、どの地区を選ぶかで過ごし方の手触りがまるで別物になります。台東の出会いでは、相手が人の多い場所を楽しめるタイプか、落ち着いた場所を好むタイプかによって、最初に会う地区を決めると失敗が少なくなります。賑わいが好きな相手なら浅草の参道を、静かに過ごしたい相手なら上野の山の文化施設を、ものづくりや料理に関心がある相手なら問屋街を、というように、地区の性格を相手の好みに重ねて考えられるのが、この区で人と会う面白さです。
隅田川の対岸や神田川の先で暮らす人と落ち合う
周辺の区で暮らす相手とは、区境を越えた先の駅より台東区側の駅で落ち合うほうが、会ったあとの行き先を上野や浅草から選びやすくなります。目印にする駅は、相手がどの方角から来るかで変わります。
川を挟んだ東側
墨田区とは隅田川を挟んで向かい合い、川そのものが区境になっています。対岸で暮らす相手とは、川沿いにある浅草駅の周辺で待ち合わせると、互いに川一本ぶんの移動で顔を合わせられます。
南へ下る秋葉原と浅草橋の方角
秋葉原は上野地区のすぐ南にあたりますが、秋葉原駅や電気街があるのは千代田区神田です。千代田区側で働いている相手なら、上野から一駅南の御徒町を落ち合う場所にすると、仕事帰りにも寄り道の感覚で来てもらえます。
区の南の端には浅草橋駅があり、JR総武線の各駅停車と都営浅草線が通っています。中央区方面から来る相手とは、この浅草橋か、浅草線でひとつ北の蔵前で落ち合えば、その足で蔵前の街歩きに移れます。
西の文京区、北の荒川区
文京区の方面から来る相手には、銀座線の上野広小路駅か、都営大江戸線の上野御徒町駅のあたりが分かりやすい目印です。東京メトロ千代田線は区内を通過するものの台東区側には駅がないので、この線を使う相手とは、降りる駅を早めにすり合わせておくのが確実です。
北に接する荒川区の方向へは、日比谷線が上野から入谷、三ノ輪へと区内を縦に結んでいます。日比谷線を使う相手であれば、乗り換えをせずに上野まで来てもらえます。
上野の山と浅草の参道、最初の一日をどこで過ごすか
上野恩賜公園は、日本で初めて公園に指定された場所のひとつです。上野の山と呼ばれる台地と不忍池からなっています。園内には東京国立博物館、国立西洋美術館といった文化施設がそろい、東京藝術大学の上野キャンパスもあることから、上野は芸術と文化の発信地とされています。高村光雲が手がけた西郷隆盛像は、初めての相手との合流地点にもしやすい存在です。
東京国立博物館の敷地には本館や表慶館、法隆寺宝物館などの建物が並ぶので、どの館に入るかを二人で選ぶことが、その日最初の相談ごとになります。
同じ園内の国立西洋美術館は、ル・コルビュジエが設計した本館が、ル・コルビュジエの建築作品の構成資産として世界遺産に登録されています。
浅草寺の雷門から宝蔵門へ続く仲見世通りは観光客で賑わい、初詣の時期にはさらに人が増えます。周辺では人力車もよく見かけるので、歩くだけで下町らしい雰囲気を味わえます。人混みの中で相手を探すことにならないよう、待ち合わせ場所は参道の手前を避け、少し離れた分かりやすい角にするのが安心です。浅草駅の近くには、隅田川に沿って隅田公園が延びていて、参道の人混みから少し離れたいときに足を向けられます。
浅草と上野の中間にあるかっぱ橋道具街は、浅草通りと交わる菊屋橋交差点のあたりから言問通りまで、南北に約800メートル延びる問屋街です。食器や調理器具、包材、食品サンプル、調理衣装などを扱う店が並び、街のシンボルである河童の置物や壁の装飾があちこちに見られます。通りの南端は菊屋橋交差点、北端は言問通りにあたるので、どちらの端で待つかを伝えておけば、交差点や通りの名前ひとつで迷わずに顔を合わせられます。料理をする相手なら、調理器具や食器の並ぶ店先を二人でのぞくだけで、通りの端から端まで歩く理由ができます。
浅草から南に下った蔵前と浅草橋は、もともと人形の街として知られてきた地区です。近年はカフェや雑貨店が増えて、散歩コースとしての関心も高まっています。玩具や文具、雑貨の卸も多く、店先をのぞきながら歩けば、昼間の数時間を気負わずに過ごせます。蔵前駅には浅草線のほか都営大江戸線も通っているので、上野御徒町や新御徒町の方面から来る相手とも、同じ線に乗ったまま蔵前で待ち合わせられます。
季節によって組み立ても変わります。夏の暑い日は、屋外を長く歩く計画より、館内で過ごす時間を挟むほうが、二人の体力に余裕が残ります。春の晴れた日なら、上野の山や隅田川沿いを歩くだけで十分な一日になります。日の短い冬は、屋外の散策を明るいうちに切り上げ、暗くなる前に上野か浅草の駅へ戻る段取りにすれば、初対面の相手も安心して帰れます。
季節の行事と静かな路地で深める関係
台東での出会いを次の約束につなげたいなら、上野の山と浅草の境内が季節ごとに見せる顔を順に追っていくと、誘う口実に困りません。上野の山の高台、忍ヶ岡は近世からソメイヨシノで名高い場所です。日本さくら名所100選にも数えられています。花見の時期は人が集中するので、満開の週末を狙うより、少し時期をずらした平日の夕方に歩くほうが、二人で話す余裕が残ります。上野の人出が気になる年は、浅草側に目を向ける手もあります。浅草、花川戸、今戸の川沿いに続く隅田公園は、関東大震災後の復興事業の一環として造られた公園です。こちらも同じ100選に名を連ねる桜の名所で、毎年さくらまつりが開かれます。浅草寺にお参りしてから隅田川沿いまで足を延ばせば、境内と川辺の桜を一日のうちに両方回れます。
浅草寺の境内では、例年3月18日と10月18日に金龍の舞が奉演されます。春と秋の二回あるので、知り合った時期に近いほうを次の約束に選べます。例年5月には浅草神社の三社祭があり、第三土曜日を基点とした金・土・日曜日に行われます。最終日は早朝に本社神輿が境内から担ぎ出され、日没後の宮入りで祭りが締めくくられるので、朝と夜のどちらを一緒に見るかを相談するだけでも予定が立ちます。祭りの三日間は浅草の駅周辺が混み合うので、合流する場所は祭りの中心から離れたところに決めておくのが賢明です。日程は曜日で決まるため、5月のカレンダーで第三土曜日を数えれば、その年の三日間がわかります。
初夏には、鳥越神社の例大祭が例年6月9日に近い土曜日と日曜日に開かれ、夜の神輿渡御が見どころです。夜祭りを見に行く日は、夕方に合流して先に食事を済ませる段取りなら、人の動きが増える時間帯にも慌ただしくなりません。秋になると、かっぱ橋道具まつりが例年10月9日前後に開かれます。年末の羽子板市は例年12月17日から19日まで浅草寺で開かれ、一年の締めくくりに二人で出かける行事として覚えておけます。
関係が落ち着いてきたら、観光地から少し離れた路地を歩く日を作るのもいい方法です。上野駅の西側には、上野桜木や池之端といった古くからの住宅地が広がり、不忍池を見下ろす一帯は閑静な住宅街です。東京藝術大学の上野キャンパスもこの静かな一角にあり、公園の人波を抜けて住宅地の道へ入れば、落ち着いて言葉を交わしながら歩けます。賑やかな浅草とは違う、静かな台東区の一面を知ることができます。
谷中は寺院が集まる寺町です。関東大震災でも戦災でも被害が少なかったこともあって古い町並みが残り、谷中霊園も広がっています。谷中の最寄りは荒川区側にあるJR日暮里駅なので、山手線や京浜東北線を使う相手とは、この駅の改札を合流場所にすると歩き出しが楽です。朝倉彫塑館を見てから、谷中の住民の台所とも呼ばれる谷中銀座商店街や夕やけだんだんの階段まで足を延ばせば、半日がゆったりと過ぎていきます。寺の多い町なので、門前や墓地の近くでは声を落として歩く心づかいも忘れずにいたいところです。
婚活を意識して将来の話が出るころには、御徒町駅の東側に宝飾業者が軒を並べ、ジュエリータウンおかちまちとして知られる一角があることも思い出してください。指輪の話を切り出すときに、二人で下見に行ける場所が区内にあるのは心強い材料です。
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