五つの台地と谷に沿って広がる文京区の生活圏
1947年に小石川区と本郷区が合わさって生まれた文京区は、皇居の北側に位置します。土地は平らではなく、武蔵野台地の坂と神田川などがつくった低地、関口台・小日向台・小石川台・白山台・本郷台という五つの台地と、その間の谷から成り立っています。坂の多い区なので、初めて会う日は歩きやすい靴を選んでおくと安心です。
区の顔ぶれを形づくっているのは、学校と病院と出版です。御茶ノ水駅のあたりは千代田区の神田エリアとひと続きの学生街で、本郷には東京大学本郷地区キャンパス、白山には東洋大学、後楽園には中央大学、千駄木には日本医科大学のキャンパスがあります。東京科学大学湯島キャンパスや日本女子大学目白キャンパス、筑波大学東京キャンパス、東洋学園大学、東邦音楽大学、文京学院大学も区内の大学で、中央大学は後楽園とは別に茗荷谷にもキャンパスを置いています。
本郷・湯島界隈は大学病院などの医療機関が集まるメディカルタウンとして知られ、医療機器や製薬の会社も多い土地柄です。出版・印刷業も盛んで、講談社や日本サッカー協会の所在地も区内にあります。
区内の移動は地下鉄が中心です。丸ノ内線が新大塚・茗荷谷・後楽園・本郷三丁目・御茶ノ水、南北線が本駒込・東大前・後楽園、有楽町線が護国寺・江戸川橋、千代田線が千駄木・根津・湯島、都営三田線が千石・白山・春日・水道橋を結び、都営大江戸線も本郷三丁目と春日に止まります。車で来る相手には、首都高速5号池袋線が区の南西部を横切り、目白台に護国寺出入口があることを伝えておくと、有楽町線の護国寺駅に近い護国寺を目印に合流の段取りを組めます。
区の南部はJR中央線に近く、東京ドームシティなどの商業地域もこの南側に見られます。それ以外の大部分は住宅地で、公園や学校、医療機関が点在しています。夜に飲み歩く街を思い浮かべていると意外に感じるかもしれませんが、昼の庭園や神社、坂道の散歩を軸に文京での出会いを育てていくのが、この区らしい過ごし方です。
明治以降は夏目漱石や樋口一葉らが区内に住み、千駄木には森鷗外の旧居「観潮楼」の跡に文京区立森鷗外記念館が建っています。一葉が1890年に移り住んだ本郷菊坂(いまの本郷四丁目)の旧居跡の近くには、「一葉の井戸」がいまも残ります。本を読む相手となら、記念館のある千駄木を訪ねる日を一度予定に入れておくのも楽しみになります。
赤門、大名庭園、神田川の土手で決める最初の待ち合わせ
降りる駅ごとに、歩いて向かえる場所の性格を並べておきます。
| 降りる駅 | 歩いて向かう先 | 場所の性格 |
|---|---|---|
| 後楽園・春日 | 小石川後楽園、東京ドームシティ | 大名庭園と商業施設が隣り合う |
| 江戸川橋 | 江戸川公園、目白台の肥後細川庭園 | 神田川沿いの斜面と細川家の庭 |
| 白山・茗荷谷 | 小石川植物園 | 大学の附属植物園 |
| 東大前・根津・千駄木 | 赤門、根津神社 | 大学の門と古社 |
| 湯島 | 湯島天満宮 | 学問の神様の社 |
| 千石 | 六義園 | 柳沢吉保の庭園 |
表の駅は、区内を走る地下鉄の各路線にまたがっています。相手が千代田線沿いなら根津や湯島、丸ノ内線沿いなら茗荷谷や後楽園、有楽町線沿いなら江戸川橋、都営三田線沿いなら千石や白山というように、相手の路線に合わせて行き先を選ぶと、初回から遠回りをさせずに済みます。
待ち合わせの分かりやすさで選ぶなら、後楽園駅の周りが無難です。後楽一丁目の都立庭園、小石川後楽園は、江戸時代初期に水戸徳川家の江戸上屋敷の中につくられた築山泉水回遊式の大名庭園で、国の特別史跡と特別名勝に指定されています。園の名は明の儒学者・朱舜水が「先憂後楽」の考えから付けたもので、中心の大泉水のまわりには円月橋や、中国・杭州の西湖を模した西湖の堤といった中国趣味の景色が配されています。いま東京ドームが建つ土地も、もとは水戸藩の屋敷地でした。ドームの周りの東京ドームシティには後楽園ホールや商業施設が集まっているので、庭園を一周したあとに食事へ移る流れが組みやすい場所です。
関口二丁目にあり、有楽町線の江戸川橋駅から歩いて3分ほどの江戸川公園は、関口台地の南斜面に神田川に沿って東西に細長く延びる区立公園です。斜面には樹木を傷めない浮き橋状の遊歩道が通り、時計塔のある四阿や藤棚のテラスもあります。川沿いに続くソメイヨシノは、明治17年(1884年)ごろに近くの住民が自宅前の土手に植えたのが始まりで、昭和58年(1983年)に新しい木が植えられました。目白台まで足をのばせば、細川家の邸宅跡を回遊式泉水庭園にした肥後細川庭園や、松尾芭蕉の住居跡に建物と庭を復元した関口芭蕉庵もあります。同じ関口には東京カテドラル聖マリア大聖堂も建っています。
白山三丁目の小石川植物園は、正式には東京大学大学院理学系研究科附属植物園といい、最寄りは白山駅と茗荷谷駅です。起こりは江戸幕府が1684年に設けた小石川御薬園で、享保年間には青木昆陽がここで甘藷を試験栽培し、1877年に東京大学の附属施設になりました。園内にはニュートンのリンゴやメンデルのブドウ、精子の発見で知られるイチョウとソテツなど、由来のある植物が育っています。草木にくわしくない二人でも、歩くうちに話がはずみます。休園日もあるため、出かける日が決まったら、植物園の案内で開園日を確かめてから向かいましょう。
本郷・弥生に広がる東京大学のキャンパスで、目印になるのは赤門です。加賀藩の屋敷の名残として残る門で、重要文化財でもあります。同じキャンパスには安田講堂や、夏目漱石の『三四郎』に描かれた三四郎池(育徳園心字池)もあり、東大前駅からは約3分で着きます。
弥生二丁目の弥生美術館は1984年に開かれた美術館で、高畠華宵や竹久夢二ら挿絵画家の作品、戦前の挿絵や少女雑誌といった「出版美術」を扱っています。1990年に隣に開館した姉妹館の竹久夢二美術館とは館内の通路で行き来できるので、二つの館を続けて見て回れます。
根津一丁目の根津神社へは、東大前駅、根津駅、千駄木駅のどこからも徒歩約5分です。日本武尊が創祀したと伝わる古社で、1706年に造営された権現造の社殿などが国の重要文化財です。近隣に住んだ多くの文豪ともゆかりが深く、境内の乙女稲荷には朱の鳥居が連なっています。
湯島三丁目の湯島天満宮(通称・湯島天神)は千代田線の湯島駅から徒歩約3分のところにあり、学問の神様・菅原道真を祀っています。受験シーズンには合格祈願の参拝者が多く訪れます。訪ねるなら明るい時間帯が落ち着きます。
本駒込の六義園は、五代将軍綱吉の側用人だった柳沢吉保が1695年から7年をかけて造らせた回遊式築山泉水庭園で、1702年に完成したとされる国の特別名勝です。紀州(いまの和歌山県)和歌の浦の景色や和歌に詠まれた名所が「八十八境」として園内に写され、渡月橋や吹上茶屋もあります。都営三田線の千石駅からは歩いて10分ほどです。
小石川台地の東端にある礫川公園には、イタリアルネッサンス式の造園手法を使った二段構成のカスケードと、春日局像があります。大きな庭園を回るほどの時間がない日の、短い散歩の行き先に向いています。
文京花の五大まつりでめぐる交際一年目
区には「文京花の五大まつり」と呼ばれる行事があり、例年の時期と会場はおおむね決まっています。
- 梅まつり(例年2月上旬から3月上旬、湯島天満宮)
- さくらまつり(例年3月下旬から4月上旬、播磨坂さくら並木)
- つつじまつり(例年4月から5月にかけて、根津神社)
- あじさいまつり(例年6月中旬、白山神社)
- 菊まつり(例年11月、湯島天満宮)
挙げた時期はあくまで例年の目安で、会期そのものは毎年あらためて決まります。湯島天満宮は内庭に梅園があり、境内の梅で知られる神社です。梅の時期に湯島へ誘うなら、天満宮の案内で開催期間を見てから声をかけると行き違いがありません。
さくらまつりの会場になる播磨坂は、小石川4丁目と5丁目の間を通り、丸ノ内線の茗荷谷駅から歩ける坂道です。第二次大戦後の区画整理でできた環状3号線の一部として整備され、松平播磨守の上屋敷があったことから播磨坂と名付けられました。昭和35年に坂が舗装された際に約120本の桜が植えられ、ソメイヨシノのほかに鬱金(うこん)桜も見られます。まつりの期間中には夕方からぼんぼりが灯された年もあり、仕事のあとに茗荷谷で落ち合って灯りの下の並木を歩くだけでも、二回目の約束としては十分な時間になります。
つつじまつりの根津神社は、つつじの名所としても知られる神社で、境内のつつじ苑が見どころになります。根津の町はこの神社(旧名・根津権現)とその門前から始まり、いまは町の中央を南北に走る不忍通りの西側が根津一丁目、東側が二丁目です。
白山五丁目の白山神社では、あじさいまつりの時期になると境内と隣の公園でアジサイが見られます。まつりの期間中には境内の富士塚も公開されるので、梅雨どきの約束にこの時期だけの行き先が加わります。
夏から秋にかけても予定は途切れません。7月には伝通院と源覚寺で文京朝顔・ほおずき市が、10月には根津・千駄木下町まつりが開かれます。秋には東大の正門から安田講堂へ続く銀杏並木が見ごろを迎え、六義園では3月下旬ごろのしだれ桜に加えて、11月から12月の紅葉の時期にもライトアップが行われることがあります。小石川後楽園にも例年の目安があり、梅は1月から2月ごろ、しだれ桜は3月から4月ごろ、紅葉は11月ごろで、紅葉の時期には通天橋のあたりが見どころになります。
五大まつりの会場は湯島、茗荷谷、根津、白山と区内に散らばっています。湯島と根津には千代田線、茗荷谷には丸ノ内線、白山には都営三田線の同じ名の駅があり、梅・つつじ・菊の回は千代田線、桜は丸ノ内線、あじさいは三田線と、季節ごとに使う線が入れ替わっていきます。
本気で付き合える人を区内で見つけたいなら、まずメールアドレスの登録から始めてみてください。
区境を越えて会うなら御茶ノ水、不忍池、日暮里
文京区は六つの区と境を接していますが、区境をまたいで会う相手の住まいを南・東・北の三方向に分けて考えると、落ち合う駅の見当がつけやすくなります。
南の千代田区とは御茶ノ水か水道橋で
文京区の南に接する千代田区は、区の中央に皇居があり、区全体の約15%を皇居の緑地が占めています。神保町には古書店街が形成され、本の好きな相手との散歩先にもなります。千代田区で出会いを探すときも、待ち合わせは文京区側にある丸ノ内線の御茶ノ水駅か都営三田線の水道橋駅にしておくと、学生街の通りにも東京ドームの側にも歩いて出られます。
千代田線の湯島と根津から、台東区の上野へ
湯島や根津から東へ向かうと台東区に入ります。上野恩賜公園の南側にある不忍池には貸しボートに乗れるボート池があり、蓮は7月から8月にかけて見ごろを迎えます。千代田線の湯島駅は不忍通りの下にあり、改札を出てから池の側へ歩いて向かえます。
千駄木の先、西日暮里と日暮里がある荒川区
北に目を向けると、千代田線は千駄木から一駅ほどで荒川区の西日暮里駅に入り、その先の町屋へと続きます。日暮里には生地や織物の店が連なる日暮里繊維街があり、服飾にまつわる品がそろうことから「ニポカジ」とも呼ばれます。待ち合わせに使える駅は二つで、千代田線が止まるのは西日暮里駅、JR山手線・京成本線・日暮里・舎人ライナーが集まるのは日暮里駅です。千駄木から千代田線に乗る日は西日暮里、相手が京成や舎人ライナーで来る日は日暮里と分けておけば、改札を間違えずに会えます。