赤羽・王子・滝野川、縦長の区を三つに分けて見る
北区は東西約2.9km、南北約9.3kmの細長い区で、荒川、隅田川、石神井川が流れています。区内は昔の行政区画をもとに、赤羽、王子、滝野川の三つの地区に大きく分けて呼ばれ、そこからさらに鉄道の沿線ごとに細かく分かれます。赤羽と王子は駅の名前にもなっていますが、京浜東北線にも埼京線にも滝野川という名前の駅はありません。相手が住まいを滝野川と話したら、最寄りの駅名もあわせて聞けば、会う場所の相談がすぐに進みます。
区内にはJRの駅が多く、京浜東北線は田端、上中里、王子、東十条、赤羽に停まり、埼京線は十条、赤羽、北赤羽、浮間舟渡を通ります。ほかに東京メトロ南北線と都電荒川線も区内を走っています。京浜東北線と埼京線の両方が停まる駅は赤羽だけです。浮間舟渡と上中里のように区の北と南に離れた駅からでも、赤羽ならどちらも一本の電車で着きます。そのため北区での出会いで相手と住まいが南北に分かれたときは、待ち合わせ駅としてまず赤羽が挙がります。
二本の線は、都心へ向かう方角も違います。埼京線は池袋の方面へ、京浜東北線は秋葉原の方面へ延びているため、平日の夜に仕事帰りで会うなら、相手の勤め先がどちらの側にあるかで落ち合いやすい駅が変わってきます。池袋側で働く相手なら十条や赤羽が、秋葉原側で働く相手なら田端や王子が、帰り道の途中に入ります。
赤羽は東口と西口で街の顔が分かれる駅です。東口近くには赤羽一番街商店街があり、路地に入ったOK横丁と並んで、居酒屋が昼下がりから人でにぎわう通りとして知られています。一方、西口から歩いた先には緑の多い赤羽自然観察公園があります。
気取らない飲み屋街は赤羽らしさですが、初対面からそこで飲み始めるより、昼のうちに会って通りは帰りがけに眺めるくらいにしておくほうが、二回目に誘うきっかけを残せます。
十条は、駅の西側に十条銀座商店街が延びる、下町の雰囲気が色濃い街です。西口では2024年11月に、39階建ての住宅棟と商業施設、区の公益施設が一体になった再開発ビルが完成しました。公益施設は翌月に開き、商店街のすぐ隣には新しい住まいも加わっています。
区の中ほどにある王子は、JRの駅前から都電荒川線にも乗れる乗り継ぎの街です。京浜東北線では田端からも赤羽からも二駅目にあたり、区の南と北に住む二人が同じ線の上で歩み寄れる駅です。
大学のある街でもあります。赤羽台の東洋大学赤羽台キャンパスは2017年4月に情報連携学部(INIAD)とともに開設され、ライフデザイン学部なども置かれています。十条台には東京成徳大学があり、赤羽や十条の駅は通勤の社会人と学生がともに使う駅になっています。
初対面の日は、王子・西ケ原・赤羽の庭と水辺へ
一時間ほど歩きながら話せる場所が、京浜東北線の上中里、王子、赤羽、田端の駅から歩ける範囲にそろっています。初めて会う日はそのうち一か所で過ごし、話が続けば駅前で食事に移る、という程度の予定で十分です。改札で会ってから歩き出せば、行き先に着くまでの道のりも、そのまま話す時間になります。
| 行き先 | 駅からのアクセス | ここで話題になるもの |
|---|---|---|
| 旧古河庭園(西ケ原) | 上中里駅・西ケ原駅から徒歩約7分 | ジョサイア・コンドル設計の洋館と、小川治兵衛作の日本庭園が斜面に並ぶ景色 |
| 音無親水公園(王子本町) | 王子駅から歩いて行ける距離 | 旧石神井川の流れを生かして1988年に整えられた水辺 |
| 赤羽自然観察公園(赤羽西) | 赤羽駅西口から徒歩約13分 | 湧水、田んぼ、雑木林 |
| 田端文士村記念館 | 田端駅北口のすぐ近く | 芥川龍之介や室生犀星など、田端に暮らした文士と芸術家 |
| 飛鳥山公園 | 王子駅、都電の飛鳥山停留場 | 旧渋沢庭園に残る晩香廬と青淵文庫(どちらも国の重要文化財) |
庭園も公園も、景色を楽しめるのは明るいうちです。日の短い冬は、会う時間を昼過ぎまでに設定すると、歩ける時間に余裕が出ます。夕方からしか都合が合わない相手とは、王子や赤羽の駅前で食事だけにして、散歩は二回目の昼に回すと決めておけば、予定を詰め込みすぎずに済みます。
王子では都電と水辺を組み合わせる
王子駅前の停留場から、都電荒川線にひと駅だけ乗ってみるのも一案です。2017年から「東京さくらトラム」の愛称で呼ばれるこの路線は三ノ輪橋から早稲田までの12.2kmを結び、王子駅前と飛鳥山の間で明治通りの上を車と並んで走り、急な坂を上り下りします。ふだん路面電車に乗らない相手なら、短い区間でも話の種になります。
飛鳥山が桜の名所になったのは江戸時代の享保年間で、徳川吉宗が1720年から翌年にかけて1270本の桜を植えさせたと伝えられています。雨が心配な日は、園内の北区飛鳥山博物館、紙の博物館、渋沢史料館を候補に入れておくと、屋根の下で過ごせます。渋沢史料館は、この丘に暮らした渋沢栄一の歩みを伝える館です。三つの館を全部回る必要はなく、一つに絞って展示を見てから丘の上へ出るくらいが、初めて会う日にはちょうどよい長さです。
音無親水公園は、季節によって表情が変わる水辺です。春は桜、夏は水遊び、秋は紅葉と、同じ場所でも訪ねる時期で印象が違います。1989年には日本の都市公園100選にも選ばれました。都電で飛鳥山まで上がり、帰りはこの水辺を通って王子駅まで歩けば、駅から駅へ一周する半日の道のりになります。花見の人出が多い時期でも、丘の上は眺める程度にして水辺で長めに過ごせば、落ち着いて話す時間をとれます。
赤羽は西口の公園と荒川の桜並木
赤羽自然観察公園は、陸上自衛隊の分屯地の跡地に1999年に開園しました。園内には江戸時代の古民家として旧松澤家の住宅が残っています。春なら、108本の桜並木と芝桜が続く荒川赤羽桜堤緑地まで足をのばせます。荒川の土手に沿って続く緑地なので、川風を受けながら並んで歩けます。
少し高い場所に上がりたい日は、海抜約20mの高台にある赤羽八幡神社があります。勝負の神様として知られ、スポーツ選手や受験生が参拝に訪れる神社なので、試験や大事な仕事を控えた相手との会話の糸口にもなります。
上中里と田端は、庭園と文士の記念館
バラの名所として知られる旧古河庭園は、年末年始(12月29日から1月1日)が休園日とされているので、年の瀬に会う予定では別の行き先を考えておきます。駒込駅からも歩いて約12分の距離にあり、相手の住まいによっては駒込で待ち合わせる手もあります。1993年に開館した田端文士村記念館は屋内の施設なので、天気が崩れても予定を変えずに使えます。展示で知った文士の話から、互いに好きな本の話へ移っていくのも自然な流れです。
岩淵では赤と青の水門を見比べる
岩淵水門は、晴れた日の昼に川沿いを歩く行き先になります。区の北側にあるので、赤羽寄りに住む相手と会う日なら、昼食のあとに足を向けるくらいの気軽さで予定に入れられます。1924年に完成した旧岩淵水門、通称赤水門は2024年に国の重要文化財となり、今は中の島へ渡る歩行者用の橋として使われています。下流約300mには1982年完成の青水門があり、色の違う二つの水門を見比べながら歩けます。水門としての役目はこの青水門が引き継ぎ、今も洪水に備えて動いている施設なので、雨の続く日や台風が近づく時期は行き先から外しておきます。
十条は商店街を昼のうちに
十条では、十条銀座商店街を端から端まで歩いてみるのも手です。再開発で新しくなった西口と、昔ながらの商店街の両方を一度に見られるので、北区に越してきて日の浅い相手にも街の様子を伝えやすい行き先です。商店街は店先の様子が見える昼の時間帯に歩くのが向いているので、十条で会う日は午後の早い時間に約束を入れると、そのまま夕方の食事にもつなげられます。駅の周辺では2020年から埼京線を高架にする工事が進んでいて、駅前の景色は来るたびに少しずつ変わります。二度目、三度目に十条で会っても、前に歩いたときとの違いが自然に話題になります。
京浜東北線、東上線、つくばエクスプレスで埼玉の三市へ
荒川の向こう岸で北区と境を接する埼玉県の市は川口市と戸田市で、蕨市、和光市、八潮市はいずれも北区とは接していません。
川口と西川口の先にある蕨駅
京浜東北線を赤羽から北へ進むと、川口、西川口の次が蕨駅です。蕨市には多くの文化財を伝える三学院があり、例年11月3日には市内で宿場まつりがあります。蕨に住む相手と会う日は、北区の京浜東北線沿線からなら川口駅か西川口駅が待ち合わせに向き、双方とも同じ電車に乗ったまま着けます。
乗り換えが一度入る和光市
和光市と北区の間には、乗り換えなしで結ぶ鉄道がありません。和光市駅には東武東上線と東京メトロ有楽町線・副都心線が乗り入れ、市内には熊野神社など、川越街道沿いの古い面影が残ります。和光で出会いを求めるなら、相手に池袋で埼京線へ乗り換えてもらい、北区側の十条か赤羽の駅で落ち合う形を提案するとよいでしょう。
秋葉原を挟んで八潮駅と結ぶ
八潮市は中小の工場が多いものづくりの街で、埼玉県の無形民俗文化財に指定された大瀬の獅子舞が今も伝わっています。市内にある鉄道の駅は八潮駅で、ここから南へ向かうつくばエクスプレスは浅草などを経て、乗り換えなしで秋葉原に着きます。秋葉原はこの路線の起点で、JR京浜東北線も通っているため、赤羽、王子、田端といった北区の駅からも一本で出られます。八潮で出会いの相手を探す場合は、秋葉原の改札を待ち合わせ場所にすれば、互いに一本の電車で来られます。
西ケ原のバラ、赤羽の祭り、王子の大晦日を二人で
旧古河庭園のバラは例年、春が5月中旬から6月、秋が10月中旬から11月に見ごろを迎えます。見ごろが年に二度あるので、春に洋館の前を歩いた相手とは、秋にも同じ庭へ行く約束を交わせます。
春の赤羽では、赤羽一番街商店街を中心に60年以上続く赤羽馬鹿祭りが例年4月ごろに開かれ、仮装パレードが通りを練り歩きます。沿道で見物するだけでも話題には事欠かないので、付き合い始めて間もない二人でも構えずに出かけられます。見物の人が集まる日なので、待ち合わせ場所は東口の通りから外して選ぶと、人波のなかで探し合わずに済みます。変わった名前は、第1回が4月1日に開かれたことから付いたといわれますが、開催が5月にずれた年もあります。
秋には、荒川の河川敷にある岩淵水門の周辺で北区花火会が開かれます。近年の開催は9月ごろです。打ち上げを待つあいだは並んで座って過ごす時間になるので、会話がまだ途切れがちな相手とも気負わずに過ごせます。河川敷は日が落ちると足元が見えにくくなるので、明るいうちに着いて、見る場所と帰りに使う駅を二人で決めてから暗くなるのを待つと落ち着いて楽しめます。
年末年始を一緒に過ごす仲になったら、王子の狐の行列があります。例年、大晦日の夜に狐の面をつけた人たちが提灯を手に装束稲荷神社から王子稲荷神社まで歩く行事で、地元の人を中心に行われています。夜の行事なので、見に行く年は行列の時刻と帰りの電車を二人で先に調べておきたいところです。年が明けた2月の午の日には、同じ王子稲荷神社で火防の奴凧を授ける凧市が例年開かれます。火防の凧を一つ受けて、どちらかの部屋に飾れば、二人で過ごした冬の記念にもなります。
付き合いが婚活に近い段階へ進んだら、行事の日だけでなく、予定のない週末を一緒に過ごしてみると相性がよく見えます。十条銀座商店街で夕飯の買い物に付き合ってもらう、相手の住む駅のまわりを案内してもらう、といった普段着の時間です。相手の暮らしぶりは、こうした日にこそそのまま伝わってきます。いずれ一緒に暮らす街を考える段階になれば、そうした週末に歩いた駅のまわりが、まず思い浮かぶ候補になります。
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