坂と谷の住宅地に、五つの路線が通る区
目黒区が生まれたのは1932年10月1日です。目黒町と碑衾町が東京市に編入され、二つの町の区域がそのまま東京市目黒区になりました。土地は武蔵野台地の南東部にあたり、標高は低い所で5m未満、高い所では35mを超えます。地図では近く見える二つの駅でも、あいだに谷をはさむと上り下りが続きます。初めて会う日の散歩は、地図で受ける印象より短い道のりで計画しておくと、相手の靴や体力を気にせずに済みます。
オフィス街の印象が強い都心の区と比べると、目黒区は住まいの街としての顔がはっきりした区です。駅前の商店街や区立公園が暮らしのすぐそばにあり、初めて会う日の行き先もその延長線上で見つかります。
東横線の五駅と、北の駒場東大前
区の中心駅は、東急東横線と東京メトロ日比谷線が乗り入れる中目黒駅です。東横線は区内で中目黒・祐天寺・学芸大学・都立大学・自由が丘の五駅に停まり、自由が丘で大井町線と交わります。大井町線には緑が丘駅、目黒線には洗足駅もあります。区の北側にあるのが井の頭線の駒場東大前駅で、東京大学駒場キャンパスの最寄りです。大岡山駅は構内の一部が区にかかるものの、所在地は区の外になります。
東横線の駅の歴史は古く、上目黒三丁目の中目黒駅と鷹番三丁目の学芸大学駅は、どちらも1927年8月28日に開業しました。中根の都立大学駅も同じ1927年に、柿ノ木坂駅という名前で生まれています。
同じ区民でも、東横線沿いに住む人と井の頭線沿いに住む人では、ふだん乗る電車も買い物に出る街も重なりにくいのが実情です。目黒で出会いを探す段階では、最寄り駅を教えてもらった時点で、同じ線の上に会える駅があるかを確かめ、線が違うときは乗り換えの少ない駅を探します。この二段階で考えると、候補の駅はかなり少なくなります。
車を使う人にとっての幹線は、目黒通り・駒沢通り・山手通り・旧山手通り・淡島通り・環七・自由通り、それに玉川通り(国道246号)です。首都高は3号渋谷線と中央環状線が区内を通る一方、名前に目黒と付く2号目黒線は区内を通っていません。車で迎えに行く約束なら、この違いを頭に入れておくと道順の相談で食い違いが起きにくくなります。
夜は駅前ごとに小さくにぎわう
大きな歓楽街があるというより、目黒区の夜は駅前の飲食店街ごとにまとまってにぎわいます。中目黒駅のまわりは「ナカメ」とも呼ばれ、高層ビルのほか、飲食店や感度の高いアパレル店が集まるエリアです。駅の近くでは、山手通りに沿って食事や買い物のできる店が並びます。学芸大学駅には学大横丁や学大市場といった商店街があり、祐天寺や自由が丘の駅前にも商店街が続きます。夕方から会う日は、相手の帰りの電車が一本で済む駅前を選ぶと、食事のあとにもう少し話すかどうかを無理なく決められます。
学生の街と、名前だけが残った駅
駒場キャンパスには教養学部があり、学部前期課程の学生は全員ここで学びます。東京音楽大学は中目黒と代官山に、産業能率大学は代官山にキャンパスを置き、大岡山には東京科学大学があります。
紛らわしいのは学芸大学駅と都立大学駅です。東京学芸大学は1964年に小金井市へ、1949年に開学した東京都立大学は1991年に八王子市へ移り、どちらの駅にも名前だけが残りました。学芸大学駅は開業時の碑文谷駅から、青山師範(1936年)、第一師範(1943年)と名前を変え、1952年にいまの駅名になっています。1999年には周辺の住民を対象に駅名の変更を問うアンケートが行われましたが、反対が過半数となり、改名は見送られました。都立大学駅が柿ノ木坂駅から改称したのも同じ1952年でした。「大学の近くで」と約束すると、相手が思い浮かべる場所とずれるおそれがあります。待ち合わせは駅の改札で決めておくのが確実です。
改札を出て歩いて向かう、最初の行き先
マッチングアプリで何度かメッセージを交わし、いよいよ顔を合わせる日が決まったら、駅から迷わず歩ける目的地を一つ用意しておくと当日の会話に集中できます。区内の主な駅と、その近くの行き先です。
| 降りる駅 | 歩いて向かう先 | 下調べしておきたいこと |
|---|---|---|
| 中目黒(東横線・日比谷線) | 中目黒高架下 | 2016年に一部、2017年に全面開業した高架下の商業空間 |
| 祐天寺(東横線) | 祐天寺(徒歩約5分) | 浄土宗の寺で、所在地は中目黒五丁目 |
| 学芸大学(東横線) | 碑文谷公園(徒歩約6分) | 碑文谷池のボートは有料、池の島に弁天様(厳島神社) |
| 駒場東大前(井の頭線) | 駒場公園(徒歩8分) | 旧前田家本邸と日本近代文学館 |
| 自由が丘(東横線・大井町線) | 九品仏川緑道 | 洋菓子の店が多い街として知られる |
学芸大学駅は急行が停まる駅で、高架下にも商業施設があります。碑文谷公園は碑文谷池を中心にした区立公園なので、東横線沿いの二人なら、駅で落ち合ってから池のほとりまで歩く流れが組みやすいはずです。祐天寺は1718年(享保3年)に、祐天上人のために弟子の祐海が開いた寺です。駅名も町名もこの寺から来ているので、最寄り駅の名前の話から寺の門まで、会話が途切れずに続きます。
区内で日比谷線が停まるのは中目黒駅だけです。日比谷線の沿線から来る相手は乗り換えずに中目黒まで来られるので、区の外から来る人と初めて会う日は、中目黒の改札を起点にすると説明が一度で済みます。昼に会う日は高架下をひと回りしてから、明るいうちに東横線で別の駅へ移る使い方もできます。
1967年に開園した駒場公園の旧前田家本邸は、洋館が1929年、和館が1930年に完成し、2013年に国の重要文化財の指定を受けました。洋館を見学できるのは9時から16時で、月曜・火曜と年末年始は休館です。開館日は変わることもあるため、前日のうちに公式の案内に目を通しておけば当日の予定が崩れません。古い洋館を見て回ったあとなら、建物の感想だけで次の話題が自然につながります。同じ公園の中には日本近代文学館もあるので、本の話が好きな相手となら、洋館と合わせて午後をゆっくり使えます。
青葉台の西郷山公園は、西郷従道の邸宅跡を1981年に公園として開いた場所です。斜面に芝生の広場があり、落差約20mの人工の滝が流れています。最寄りは東横線の代官山駅で、歩いて13分ほど。ただし代官山駅は渋谷区の駅なので、目黒区内の駅で待ち合わせたい相手には、その点を先に伝えておくと親切です。
甘いものが好きな相手と自由が丘で会う日は、入る店を前もって一軒に決めず、九品仏川緑道を歩きながら二人で選ぶ手もあります。向かい合って座るより、並んで歩くほうが言葉の途切れも気になりません。
寺社を歩く日なら、五色不動のひとつに数えられる目黒不動(瀧泉寺)や大鳥神社が行き先になります。駅前の人混みから少し離れて話したいときは、中目黒公園や菅刈公園、駒場野公園といった区立公園も候補に入ります。碑文谷池のボートや西郷山公園の芝生は、日のあるうちのほうが楽しめます。夜は駅前、昼は公園や寺社と、時間帯で行き先を分けて考えるのが目黒区らしい組み立て方です。
世田谷区の向こう、狛江市の相手と会う駅
池ノ上の次で小田急線に乗り換える下北沢
目黒区が境を接しているのは23区のうち4区だけで、狛江市とは接していません。目黒区から見て世田谷区の先、西の方角にあるのが狛江市で、市になったのは1970年です。「絵手紙発祥の地」をうたう街でもあります。
狛江で出会いを探す人と目黒区側の人が会う日は、下北沢駅(世田谷区)を待ち合わせに使うと段取りが簡単です。井の頭線は渋谷を出て神泉、駒場東大前、池ノ上と進み、その次が下北沢です。ここで小田急小田原線に乗り換えられ、狛江駅も小田急線の駅なので、相手は乗り換えなしで下北沢まで出てこられます。駒場に近い区の北側に住む人なら駒場東大前から一本で着き、中目黒や自由が丘から向かう人は渋谷で井の頭線に乗り換えます。
十月の自由が丘、十一月の駒場、春の目黒川
目黒区の行事は、自由が丘や駒場のように駅ごとに会場が分かれています。初めて会った駅とは別の駅の行事を選べば、二度目、三度目と会うたびに、相手が暮らす沿線の様子を一つずつ知っていけます。
女神まつりと、地名の由来
自由が丘女神まつりは1973年に始まった祭りで、自由が丘で開かれる八つのイベントのひとつです。例年10月上旬、スポーツの日の前日と当日の2日間に駅の周辺が会場になります。昼から21時まで開かれてきたので、昼に会う約束でも夕方からの約束でも祭りに立ち寄れます。自由が丘という地名は1927年に創立された自由ヶ丘学園に由来し、いまの表記になったのは1965年です。祭りの人波を歩きながら、そんな話をしてみるのも一興です。
銀杏並木のキャンパスで開かれる駒場祭
駒場祭は東京大学の学園祭で、第1回は1950年11月25日でした。勤労感謝の日の前後の3日間に開かれ、例年11月下旬にあたります。会場の駒場キャンパスは、1935年に旧制第一高等学校が移ってきた場所で、メインストリートには銀杏並木が続きます。婚活で知り合った相手とでも、学園祭のにぎわいの中なら肩の力を抜いて一日を過ごせます。
冬の展望台と、春の川沿いの歩き方
西郷山公園の展望台からは、冬の晴れた日に富士山を望めます。寒い季節は天気予報を見て日を決め、昼のうちに展望台まで歩く約束にすれば、出かける先に困りません。
延長7.82kmの目黒川は、区内では川沿いに桜並木が続き、花見の中心は中目黒駅から池尻大橋駅のあいだです。花見の時期には、区が来訪者に三つのお願いを出しています。ごみを捨てないこと、騒がないこと、そして雑踏事故を防ぐため、中目黒駅からは警備員の誘導に従って一方通行で立ち止まらずに進むことです。区は池尻大橋駅や目黒駅から来ることや、午前中に訪れることも勧めています。桜の便りが聞こえてきたら、区がその春に出す花見の呼びかけを読んでから出かける日を決めてください。
ゆっくり話しながら桜を見たいなら、区の北端の大橋に近い池尻大橋駅(田園都市線)の側から朝のうちに歩き始める計画が向いています。見頃の週末に中目黒駅前で待ち合わせると、立ち止まれない人の流れに入ることになるため、初めての花見デートには避けたほうが安心です。
さんまの区民まつりと、寺の名の付く祭り
目黒区の区民まつりは「目黒のSUNまつり」と呼ばれています。落語の「目黒のさんま」にちなんだ行事で、会場は田道広場公園の周辺、さんまは宮城県気仙沼産です。区内に住む相手なら、この祭りに出かけたことがあるかを聞くだけでも話が広がります。名前のよく似たさんまの祭りは目黒駅の近くでも開かれるので、誘うときは田道広場公園という会場名も添えて伝えると、当日に別の祭りへ向かってしまう心配がありません。目黒駅のほうの祭りで出るのは、岩手県宮古産のさんまです。
夏には中目黒夏まつりがあり、桜の季節とは別の時期に中目黒を歩くきっかけになります。祐天寺み魂まつりという行事もあり、最初の日に祐天寺の門まで歩いた相手となら、二度目に同じ寺の名の付いた祭りを訪ねる流れも組めます。
このほか、大鳥神社や氷川神社に伝わる剣の舞、目黒ばやし、目黒区商工まつり(目黒リバーサイドフェスティバル)といった行事もあります。ここに挙げた行事の開催時期は、区や神社の告知で確かめてから予定に入れると確実です。祭りの日に歩くと、見慣れた街でもふだんとは違う顔が見えてきます。
目黒区で長く付き合える相手を探す最初の一歩は、返事を受け取るためのメールアドレスを知らせることです。